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プロダクトの「わかりやすさ」を生む分類・命名・構造化 〜minneのカテゴリ再編事例〜

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この記事の担当 @ohyuka_mini

はじめに

こんにちは。minneプロダクトデザイナーのおうゆかです。

先日公開された『わかりやすさを作るIA』の記事では、IAという分野を総ざらいしながら、ペパボにおけるIAの位置づけや「情報」という言葉の意味分解、そしてプロダクトに求められる「使いやすさ」とその中の「わかりやすさ」について@kotarokさんに紹介していただきました。 こちらの記事では、「わかりやすさ」と「プロパティ」という視点で、minneで取り組んでいるカテゴリ再編の事例を紹介します。

minneのカテゴリが抱えている課題

まずはじめに、従来のminneのカテゴリをご覧ください。

【画面】従来のminneのカテゴリ分類での検索画面のスクリーンショット。このスクリーンショットから見受けられるIAの観点での問題点は本文で後述する。

この状態のカテゴリ分類には、実はIAの観点で大きく2つの問題点があります。

①ラベリングのあいまいさ

「文房具・ステーショナリー」カテゴリを見てみましょう。

文房具とステーショナリーは同じ概念を指すラベルであるため、意味が重複してしまっていることになります。プロダクトにおけるラベルの役割は適切な分類と粒度で概念の範囲を定義しそれを参照可能にすることですが、このように矛盾が生じている・一貫性がないなどの適切でないラベリングはあいまいさを招き、結果としてユーザーの正しい理解を阻害してしまうことになります。

②カテゴリ分類の軸のブレ

次に、「ニット・編み物」と「陶器・ガラス・食器」、この2つのカテゴリを見てみましょう。

他のカテゴリが「物の種類」を軸に分類されているものであるのに対し、上記の2カテゴリは「素材」や「手法」という異なる軸で分類されています。

このようなカテゴリ分類の軸のブレが今回の記事のテーマでもある「わかりやすさ」に悪影響をもたらします。以下のセクションでは、なぜカテゴリ分類の軸がブレていると「わかりやすさ」が失われてしまうかについて、もう少し詳細に掘り下げていきます。

【画面】従来のminneのカテゴリ分類の問題箇所を図示した検索画面のスクリーンショット。問題点は前述の通り。

カテゴリ分類の軸がブレることの問題点

カテゴリ分類の軸がブレていると実際にどのような問題が起こるのでしょうか。

「ニット・編み物」、「陶器・ガラス・食器」を例にその具体的な問題点を見ていきましょう。

前提として、物を分類する上で基準となる軸にはさまざまな種類があります。 その中でどの軸を採用するかは各サービスや機能が実現したい目的によって異なります。

代表的な分類の方法としてはLATCH法が挙げられます。 "LATCH" とは、それぞれの分類軸の頭文字をとったものになります。

  • Location:都道府県別での分類など
  • Alphabet:50音順やアルファベット順など
  • Time:日程別やタイムテーブルでの分類など
  • Category:物の種類別での分類など
  • Hierarchy:ランキングやサイズ別での分類など

minneでは基本的に排他的な分類(1つの「物」が複数のカテゴリには属さない)の方針をとっており、 分類の軸としてはCategory:物の種類別での分類を採用しています。

しかし、「ニット・編み物」「陶器・ガラス・食器」カテゴリではCategory:物の種類別での分類ではなく素材・手法(=プロパティ)という異なる軸で分類がされています。


※プロパティとは?

プロパティ(Property)とは「所有物、性質、属性」というような意味の言葉です。あるオブジェクト(対象物、ここでは個々の作品のこと)は概念的には様々なプロパティの集合であるとみなせます。そして複数のオブジェクトにいくつかの共通するプロパティがある場合それらは同じ性質を持ったものとして一つのカテゴリに分類できます。また逆に、すでに知っているラベルを持つカテゴリについては、そこに属するオブジェクトがどのような性質(プロパティの集合)を持っているのかを推察することもできます。

たとえば、ダイヤの指輪とトパーズの指輪には、用途・装着部位・形状に共通するプロパティを持っているので、これらは「指輪」のカテゴリーに分類することができます。

カテゴリを伝えることで関連する物事がもつ共通認識のプロパティが理解でき、さらに特徴を示すプロパティを伝えることで、その物事を捉えやすくなります。

【図表】カテゴリとプロパティの関係性を例示した図表。たとえば「ダイヤの指輪」と「トパースの指輪」の2つのオブジェクトは、それぞれ素材や価格などのプロパティは異なっても「用途:身に着ける飾り」・「装着部位:指」・「形状:指輪」の3つのプロパティが共通していることで、「指輪」というカテゴリに分類することができる。また、「パールのピアス」と「タッセルのピアス」の2つのオブジェクトも、それぞれ素材や価格などのプロパティは異なっても「用途:身に着ける飾り」・「装着部位:耳」・「形状:ポスト(穴に通す軸がある)」の3つのプロパティが共通していることで、「ピアス」というカテゴリに分類することができる。


複数の異なる軸で分類されたカテゴリが同時に存在すると、1つの「物」が2つ以上のカテゴリに相当するケースが生じてしまいます。

1つの「物」が2つ以上のカテゴリに相当してしまうことで、ユーザーは探索行動を行う上で最初の入り口としてどちらを選択するのが適切か迷ってしまうことになり、それが結果として「わかりにくさ」に繋がってしまいます。

例えば陶器のお茶碗をminneで探したい時、検索の入り口として「陶器」と「食器」のどちらから探せば良いのかユーザーは迷ってしまうことになるでしょう。

【画面】適切なカテゴリ分類がされていない陶器・ガラス・食器カテゴリを選択したときのスクリーンショット。上から順に「すべての陶器・ガラス・食器」「陶器」「ガラス工芸」「食器」「その他」というようにリストが表示されている。問題点については前述と後述の本文を参照。

また、カテゴリ分類の軸のブレは上記の検索の入り口としてのわかりにくさの問題以外に、機能提供の面でも問題を引き起こします。

検索体験において、minneでは素材や手法などのプロパティは膨大な検索結果から選択肢を狭めるための「絞り込み」機能として用いられています。 この場合、「陶器・ガラス・食器」カテゴリのようにプロパティが含まれるものをカテゴリとして用いてしまうと絞り込み機能で必要なプロパティがカテゴリとして重複してしまい、階層に矛盾が生じてしまいます。

🙆‍♀️ 適切なカテゴリ分類がされているケース e.g. アクセサリーカテゴリ

【図】アクセサリーカテゴリにおいて適切なカテゴリ分類がされているケースの階層構成を表したツリー図。大カテゴリ「アクセサリー」から分岐して3つの小カテゴリ「指輪」「ピアス」「ブローチ」が存在する。さらに小カテゴリ「指輪」は2つのプロパティ「サイズ(例: 1号、2号、3号、フリーサイズ...)」「素材(例: ゴールド、シルバー、真鍮、パール、ダイヤモンド...)」、小カテゴリ「ピアス」は3つのプロパティ「両耳用/片耳用」「金具の種類(例: チェーン、フック、スタッド、フープ・リング...)」「素材」、小カテゴリ「ブローチ」は2つのプロパティ「金具の種類(例: ブローチピン、スティックピン、タックピン、ストールピン、クリップ...)」「素材」を持っている。

🙅‍♀️ 適切なカテゴリ分類がされていないケース e.g. 陶器・ガラス・食器カテゴリ

  • カテゴリ名がガラスであるのに対しプロパティもガラスになってしまう
  • プロパティを小カテゴリとして持ってきてしまっているため、本来プロパティが該当するはずの階層で逆に物の種類別でのカテゴリ分類を行う必要が出てきてしまう

【図】陶器・ガラス・食器カテゴリにおいて適切なカテゴリ分類がされていないケースの階層構成を表したツリー図。大カテゴリ「陶器・ガラス・食器」に対してから分岐して3つの小カテゴリ「陶器」「ガラス」「食器」が存在しているが、小カテゴリ「ガラス」ではカテゴリ名も素材プロパティも同じ「ガラス」になってしまったり、食器、花瓶、置物、人形...といった本来物の種類別で行うカテゴリ分類がプロパティの階層で展開されてしまうというような問題が発生してしまう。

問題点を踏まえて「陶器・ガラス・食器」カテゴリで行った改善

以上を踏まえて、プロパティ(素材)での分類をやめ、 Category:物の種類別での分類の1軸で分類するようにしてカテゴリ名を「食器・キッチン」に変更しました。

そうすることで探索行動の入り口でもあるカテゴリ知覚での迷いや絞り込み機能におけるプロパティ矛盾の問題が解消され、結果としてプロダクトの「わかりやすさ」を改善することができました。

【画面】適切なカテゴリ分類に改善されたキッチン・食器カテゴリの検索画面のスクリーンショット。上から順に「コーヒー・お茶用品」「和酒器」「皿・プレート」「ご飯茶碗」「汁椀・ボウル・鉢」「箸・カトラリー・ピック」「箸置き」「お盆・トレイ」というようにリストが表示されており、たとえば陶器のお茶碗を探したいときはまず入り口に「ご飯茶碗」を選べば良いとわかる。

まとめ

💡 適切なカテゴリ分類はユーザーに適切な探索行動の道筋を提供し、結果としてプロダクトの「わかりやすさ」を生む

今回はminneにおいてIAの観点から分類・命名・構造化を行い、カテゴリ再編に取り組んだ事例を紹介させていただきました。

minneでは“自らの「生活・人生・営み」をデザインする”というブランドビジョンを掲げ、次のように定義しています。

自らの「生活・人生・営み」をデザインする
日々の生活の中で「好きなもの・こと」を探し、出会い、選ぶことを繰り返して自らの価値観を形作り、変化させる。このような暮らしのデザインを大切にする私たちは、ものづくりを通して他者の価値観の刺激とつながりを楽しみ、より創造的に、自分らしく生きていくことを尊重する。

このようなブランドビジョンを構成する重要な要素の1つが、“好きなこと・もの・人との出会い”です。今回取り組んだ適切な分類・命名・構造化は、ユーザーに「わかりやすさ」や新たな出会いをもたらし、結果としてminneのブランド形成・強化に繋がっていきます。