この記事の担当 @kiha
はじめに
こんにちは!minne事業部でデザイナーをしているkihaです。
先日『ビジュアルデザインの「表現」において大切なこと』という記事が公開されました。
この記事では、その中の『適切な表現を作るには、人は全てのものを常に「記号として解釈している」ことを理解する』という内容に関連して、普段私が心掛けている「狙った意味に解釈してもらえるデザインのコツ」についてご紹介します。
狙った意味に解釈してもらえるデザインを作るには…
①目的・意味を整理する
達成すべき目的や伝えるべきメッセージを整理します。メッセージは施策の上流で固まっていることもありますが、そうでない場合はここでディレクターと一緒に考えます。
②目的・意味の咀嚼、深堀りをする
前段で整理されたメッセージをどのように伝えるかの戦略を練ります。言いたいことを全部コピーにすればいいわけではないので、どの部分を非言語情報として伝えるとよいか、などを考えていきます。
③イメージボードを作って記号として連想が働きそうなイメージを集める
前段で設定した意味を伝えるために、どのような記号を使えばうまく連想が働くかを確かめながら集めます。連想の方向は様々なのでまずは量を集めてその中から方向性を固めていきます
④集めた記号を全て使おうとせず、効果的な記号を選んでアウトプットに落とし込む
前述のように、集めた記号を全部使う必要はなく、そのときの施策などのコミュニケーション文脈も考えて、最もうまく意味を伝えられそうな方向性に絞って利用していきます。
minneの具体的な事例
では、ここからは実際にminneでやった施策にあてはめてみてみましょう。
事例その1:minne SPECIAL WEEKEND
①目的・意味を整理する
『ビジュアルデザインの「表現」において大切なこと』の記事を参考に、「目的・意味」を以下のように定めました。
②目的・意味の咀嚼、深堀りをする
夏を喚起させるイメージはたくさんありますよね。里山に響く蝉の声、おばあちゃんの家で食べるかき氷、風鈴や線香花火と行った渋い方向もありますが、今回の目的と意味から考えるとちょっと外れそうです。
ということで集めたイメージの中から「若者向けのポップな夏」を演出するため、海外ドラマで見るようなお金持ちの若者たちがヨットに乗ったり、プール付きのホテルやモーテルで楽しくバカンスを過ごす様子を連想させる、という方向性を定めました。
③イメージボードを作って記号として連想が働きそうなイメージを集める
④集めた記号を全て使おうとせず、効果的な記号を選んでアウトプットに落とし込む
連想を促している記号要素
- 青に水色の格子柄がスイカ・ひまわりなどの夏っぽいモチーフと一緒にある→プールの底、タイル
- 青とピンクのカラーリング→ポップ、ちょっとレトロ
- ボールドの見やすいフォントとくるっとしたフォントの組合せ→プールサイドの看板、モーテルのネオン
ちなみに格子柄という記号は、白地に青の線で鉛筆やシールが一緒にあったら方眼ノートにみえますし、黒にネオンカラーで描けばレトロな未来的SF空間に見立てることができます。
同じ記号をつかっても組み合わせや文脈によって解釈が変わるのが面白いですよね。
完成したもの
こうしたプロセスを経て、こんなかんじのデザインになりました。(LPはこちら。)
事例その2:minne Autumn Fair
続いて事例2つ目です。
①目的・意味を整理する
「目的・意味」の表はこんなかんじになります。
②目的・意味の咀嚼、深堀りをする
落葉・リス・栗などの具象的な作品のかわいらしさを活かすために、抽象的なモチーフで秋を演出することに決め、あたたかい紅葉の色とチェック柄をあわせることで「落ち葉舞うピクニック」を表現することにしました。
③イメージボードを作って記号として連想が働きそうなイメージを集める
④集めた記号を全て使おうとせず、効果的な記号を選んでアウトプットに落とし込む
連想を促している記号要素
- ギンガムチェック柄が秋の食べ物と一緒にある→ピクニック用の敷物や水筒
- フランスの伝統色マルーンをはじめとする茶系のカラーリング→フランスっぽさ、落葉などの秋の景色、豊穣さ
- セリフのやや古めかしいフォント→ヨーロッパの街並で見る看板、ジャムのラベル
完成したもの
できあがったデザインはこんなかんじ。(LPはこちら。)
まとめ
今回お話しした「狙った意味に解釈してもらえるデザインのコツ」は以下の4つでした。
- 目的・意味を整理する
- 目的・意味の咀嚼、深堀りをする
- イメージボードを作って記号として連想が働きそうなイメージを集める
- 集めた記号を全て使おうとせず、効果的な記号を選んでアウトプットに落とし込む
伝えたいメッセージを必ずしもすべて言語化してコピーに落とし込んだり、直接的にそれ自体を絵や写真で表現しなくても、文脈に沿った連想を導くことによって、非言語表現からより効果的に狙ったメッセージを届けることができました。
このように適切な連想を引き出すデザインをするためには「メッセージを要素に分解」してそれらを「言語的および非言語的に再構築する」ことが重要です。
この時、人間の認知プロセスにある記号の解釈という働きをしっかり理解し活用することができればより効果的なデザインを導くことができるでしょう。
本記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました!