執行役員 VP of Engineering 兼技術部長の @hsbt です。
GMO ペパボ株式会社(以下、ペパボ)では一年に二回、半期ごとにエンジニアが実績の資料を作成し、資料に基づいて評価を行う制度があります。評価資料では、ペパボが大切にしている三つのことである「なかよくすること」「ファンを増やすこと」「アウトプットすること」それぞれについて、エンジニアとしてどうコミットしたかというのを述べる必要があります。
2019 年上期(1-6月)の評価を @hsbt が行った部署のメンバーに向けて、何故エンジニアにとってアウトプットが大事なのか、ということを述べた文章を社内で共有しました。今回はその文章をアレンジして公開したいと思います。
今回の評価で、気になったこととしては、 「OSS は開発していません、発表もしていなかったのでアウトプットはBです」という自己評価が散見されたことです。一次評価者のみなさんにはお伝えしましたが、評価というものは2019 年上期の職位制度の総評にもある通り、組織、エンジニア全員、今回の場合はホスティング事業部に所属しているエンジニアが評価者、被評価者というそれぞれの立場で作り上げていくものです。つまり、評価とは、エンジニアのグレード評価基準として定められている基準 "だけ" を持ってきて、基準の A に満たないので B です。終わり。というものではありません。被評価者、評価者共にその基準に至るように何をしたのか、目標設定をどうしたのか、どうすればできるのか、という点をそれぞれが考えて、言葉にして議論していくことが評価の本質です。
特にアウトプットについては、 @hsbt が日頃から接する機会が多いに人に伝えている「エンジニアやってれば毎日1つくらいアウトプットすることある」や「質より量!」みたいな部分を意識していただきたいです。例えば、障害対応が多くて他の事業部で使えるようなソフトウェアを開発する時間がなかった…という人もポストモーテムの文章を書くことから初めて、得られた改善策とその結果をテックブログに自分たちの取り組みとして公開すれば立派なアウトプットになるでしょうし、調査を楽にするワンライナーを作って公開するのもアウトプットです。毎日の学びの中から学んだことをとにかく言葉、文章に出すという習慣をつけましょう。
話は変わりますが、なぜアウトプット、アウトプットと言っているのかについて説明したいと思います。ペパボが事業領域としている業界は技術やマーケットのトレンドの移り変わりが早く、変化し続けるということだけが変化しないと呼ばれる業界です。そのような不確実性の高い業界で末長くキャリアを積んでいくためには、学習というものを学習する必要があります。@hsbt の大好きなシステム工学で分解すれば学習というものは以下のように表現できます。
- インプット
- (脳による)処理
- アウトプット
- アウトプットに対するフィードバックをインプットへ
ライフステージの変化など、年齢を重ねるにつれて、1と2だけの学習には限界がくるでしょう。そのためにも、3と4も含めた学習のサイクルを回すことで、同じ時間の中でより効率的に学習を行う術を学ばねばなりません。例えば、インプットする方法も単に本を読むだけではなく、講演を聞きに行ったり、コードの写経などの手段に切り替えても良いでしょう。処理の仕方もただ暗記するということだけではなく、差分を発見しそれらを抽象化するという手段もあります。そして重要なことは、発見した事項を他の人のインプットとなるようにアウトプットをすることです。アウトプットすることで、自分が何を学んだかが明らかになり、フィードバックを得ることができれば、何を学んでいないか、次に学ぶべきことは何か、というサイクルを完成させることができます。
上記に書いたことはかなりざっくりした内容なので、いまいち学習する時間が取れない…そもそも学習の仕方がわからない…という人は西尾さんのエンジニアの知的生産術を読むことをオススメします。
私自身もこの文章を書くことで、改めてアウトプットについて考えるきっかけとなりました。自分も、個人のサイトにてほぼ毎日ブログを更新し、何かしらの OSS のパッチを書き、カンファレンスで発表を行っています。これは自分の成果を世の中にアピールするという点もありますが、それ以上にアウトプットについてのフィードバックを得て、より良いアウトプットを出すために行っているという目的意識の方が強いということに気がつきました。今後はより一層、学習のループを意識しながらコードを書いていきたいと思います。