はじめに
こんにちは! 鹿児島オフィスで働いている よしこ @yoshikouki です。
このたび、2025年3月1日付けで事業開発部のエンジニアリングリードに就任しました。この記事では、設立から1年と少しが経った事業開発部について紹介するとともに、エンジニアリングリードとしての就任挨拶を兼ねて私の思いや目指す方向性をお伝えします。5分程度で読める内容ですので、最後までお付き合いいただければ幸いです。
GMOペパボの事業開発部について
事業開発部は、「独自のビジネス領域で新規事業を展開し、同時に次世代のリーダーを育成する」を目的として2023年10月に発足しました。私は2024年1月に配属になり、当時は部長・副部長と私の3人で構成されていました。
それから続々と人が集まり、発足以後の1年強の期間で次のようなリリースを行いました。
- GMO即レスAI:AI技術を活用した業務プロセスの改善提案
- GMOペパボMisskey:分散型SNSとリレーサーバーを運営するプロジェクト
- Alive Project:「配信」の表現活動を支援する包括プロジェクト
- Alive Studio:簡単に高品質な配信画面を作成できるサービス。OBS Studioと連携
- ストリーマーマガジン:VTuberや配信クリエイター向けのWebメディア
また、事業開発部発足より以前にリリースした GMOレンシュ(習い事の連絡・集金サービス)も管轄下に入っており、発足から1年余りで多様なプロダクトを運営しています。
とくに2024年9月にリリースした Alive Project とその翌月にリリースした Alive Studio は現在の注力プロジェクトであり、GMOペパボとしてはじめて動画・ライブ配信支援事業に参入する意欲的な取り組みです。当社のミッションである「人類のアウトプットを増やす」の実現のため、配信の表現活動を支える多様なプロダクトの提供を目指しています。
チーム体制と技術スタック
事業開発部は、スピードを重視した事業開発を進めており、東京オフィス・福岡オフィス・鹿児島オフィスの3拠点から20名を超えるパートナーが在籍しています。
エンジニアは5名在籍しており(業務委託を含む)、主に Alive Studio を開発しています。なんとそのうち4名が鹿児島在住です。「鹿児島から世界に向けて事業開発する」というのは、地方限定ではありますが事業開発部の面白さです。
事業開発部で採用している技術スタックは、以下の通りです
カテゴリ | 技術スタック |
---|---|
フロントエンド | Next.js / React (いずれもTypeScript) |
バックエンド | Node.js / Ruby on Rails |
インフラ | AWS / Fly.io / Heroku |
その他 | Sentry / OpenAI API など |
新規事業を次々に展開する部門の特性上、技術選定においても「スピード」と「拡張性」のバランスを重視し、最新技術の積極的な検証と導入を行っています。Alive Project, Alive Studio では、サービスリリース後に公開された React 19, Next.js 15, TailwindCSS 4 など、比較的大きな変更が加えられたライブラリへの追従も済ませています。
Alive Studio の開発
これまで紹介したプロダクトの中でも、技術的な挑戦が際立っているのが Alive Studio です。
当サービスは、配信者に広く使われているソフトウェアの OBS Studio に組み込まれる Web アプリケーションです。従来、配信用の素材やレイアウト変更は OBS Studio 上で直接操作する形になりますが、素材の調達や変更・管理作業には手間がかかります。Alive Studio は Web 技術を使ってその課題を解決しています。
OBS Studio 上で Alive Studio を開いて YouTube 配信のコメントを表示している様子
この手の連携機能といえば、通常 OBS Studio 専用のプラグインやスクリプトを作ることが多いです。しかし、Alive Studio は OBS Studio 内蔵のブラウザ機能である CEF (Chromium Embedded Framework。正確にはそれを OBS Studio 専用に改変したもの) 上で動く独立した Web アプリケーションとなっているため、ブラウザが動作するのであれば他の配信用ソフトウェアでも動作する可能性があります。つまり、Web 技術を採用したことにより、OBS Studio を使用していない配信者にも価値提供できる余地を生んでいます。
ここまでが、事業開発部の特徴やリリースしてきたプロダクトの簡単な紹介です。このような取り組みを支えるためには、新しい挑戦を続ける組織力の向上がより重要となるため、より盤石にするためのエンジニアリングリード任命も自然な流れのように思います。続いて、そのエンジニアリングリードを拝命した私の思いをお伝えします。
事業開発部のエンジニアリングリードとして
エンジニアリングリードとは
まず、GMOペパボにおけるエンジニアリングリードについて確認しておくと、エンジニア職位制度における「マネジメント」の職位の 1 つです。一般的にエンジニアリングマネージャーと呼称されることもある職位ルートであろうと理解しています。
当社のエンジニア職位制度は、1等級の「ルーキー」から3等級の「アドバイザー」までは一本のルートになっており、4 等級からは「プロフェッショナル」と「マネジメント」に分岐する設計です。
エンジニア組織と制度 - Pepabo Tech Portal より引用
マネジメントとプロフェッショナルの定義は次のようになっており、プロフェッショナルはより高度な専門職ルートであると理解できます。
キャリアパス | 役割 |
---|---|
マネジメント | 部門方針・目標および全社技術方針に基づき、部門全体の技術選択および技術者組織について方針を決定し、実行します。 |
プロフェッショナル | エンジニアの上位職として、目標達成に大きく寄与する課題を発見し、その課題を技術力で解決に導きます。 |
事業開発部におけるエンジニアリングリードの特徴
エンジニアリングマネージャーは、技術だけでなく事業開発の観点でも組織作りが求められます。ここでいう組織とは、エンジニアだけではなく関係する他職種のパートナーも含めてのものです。
その見地に立ったとき、GMOペパボの事業開発部の特徴は、事業開発の観点がより強いところにあるように思います(技術の優先順位が下がるという意味ではありません)。新規事業の立ち上げから成長、そして収益化までの事業開発を支える技術基盤の構築と、それを実現するエンジニアだけに留まらない事業部全体を対象とした組織形成が主な責務です。
エンジニアリングリードとしての yoshikouki
私が未経験のエンジニアとしてGMOペパボへ入社したのは2020年でした。前職では規模感や畑が大きく異なりますが、家族経営している介護保険施設の統括責任者として会社を経営していました。また、その規模感により経営とマネジメントの両方を経験しています。
GMOペパボへ入社後は、ありがたいことに研修を受講する機会に恵まれ、鹿児島エンジニアリングチームへ配属になると同時にまずホスティング事業部の担当となります。それから一年と経たずにGMOレンシュの立ち上げに参画し、それ以後も開発を続けました。2024年1月の事業開発部への担当先変更からは、それまで以上のスピード感で先述の事業やプロジェクトを立ち上げてきました。ここ4年ほどをふりかえると、事業開発部が発足する以前から事業開発部のエンジニアのような開発を続けてきたように思います。
これらの経験から学んだことは数え切れないほどありますが、その中でもこと新規の事業開発におけるエンジニアリングで大切にしていることがいくつかあります。かいつまんで一覧にすると、
- より多くの試行を重ねるためのスピード感
- 素早く、小さく試行する
- 作るもの、将来作るもの、作った方が良さそうなもの、作らないものとを分けて考える
- とくに「作るもの」と「将来作るもの」を区分することでリリースまでのリードタイムを短縮する
- プロダクトからの要請に答えられる柔軟な設計と開発体制
- 現在の仕様は1年後には変わる。変われるようにする
- 「すべてが自分ごと」
- 「デザイナーからの要請」や「ビジネスサイドからの要請」ではなく「プロダクトからの要請」である。人対人の議論ではなく「プロダクトの改善」をチームで議論する
- 一見そのように見えたとしても大体が主観である。本当にプロダクト以外からの要請なら、プロダクトの要請になるまで深掘りする
- 今の最善を尽くして将来に託す
- 現時点で確実なものと不確実なものを分けて考える
- 不確実なものは考え尽くしても最終的には分からないことを念頭に、想定されるケースを見通して今できることを尽くす
- また、過去の実装もそのときの最善を尽くした代物であることを忘れない
- ユーザーの生活が作ったものによってどう変わるのかを徹底的に思案する。そして試行する
- 基本的なことだが失念しがちであり、ともあれば反対に過剰に大きく考えてしまうこともある
- 現状はどうか、そこに何を作るのか、それによってどう変わるのか。仮説を立てて小さく試行する
- ユーザーに対して見えづらい・恩恵のないタスクが疎かにされることがある。ユーザーを除くプロダクトの関係者にとっても同様に考える
これらのエンジニアとしての学びは、同時に事業開発部のエンジニアリングリードとして目指す指針にもなるのではないかという思いもあります。まだ手探りの段階ですが、これらの考えを出発点として、より良い事業開発部の道筋を模索していきたいです。
おわりに
この記事では、事業開発部の概要と近況、そして私のエンジニアリングリード就任にあたっての思いをお伝えしました。これまでの経験から得た4つの学びをさらに研ぎ澄ませながら、事業開発部やGMOペパボをもっとおもしろくしていきたいと思います。
私たち事業開発部は、これからも新しい価値提供に挑戦し続けます。当社のミッションである「人類のアウトプットを増やす」ために、多様なプロダクトを通してユーザーと社会の表現活動を支えていきます。引き続き、GMOペパボと事業開発部の取り組みにご注目ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。