こんにちは!コーポレートデザインチームのmewmoです。
今回は、いつもレポートしている社内デザイナーの勉強会「Designer's MTG(通称 デザミ)」とは別に、年2回デザイナー全員が参加して開催される共有会「Designer All Hands」について紹介します。
デザミについてはこれまでに書いたレポート記事をぜひご覧ください〜
直近のデザミのレポートはこちら
「Designer All Hands」とは?
ペパボでは年2回、デザイナーが全員集う共有会としてDesigner All Handsを開催しています。2部構成に分かれており、第1部では近況報告やデザインにおける取り組みや、共通言語としてデザイナー全員の認識共有を図りたいトピックについて共有し、第2部ではほめほめタイムと称し、ペパボのデザインプリンシプルを取り組みで体現したデザイナーを紹介してみんなで称え合います。
Designer All Handsを開催する目的は次の3つです。
1. デザイナー全員が共通言語を持ったうえでペパボのデザインの取り組みについて共有し理解する
共通言語を持ってペパボのデザインの取り組みについて理解することで、デザイナー全員が同じ理解のもと同じゴールを目指してデザインに取り組むことができます。
2. ペパボ各所でのデザインの取り組みについて知ってもらうことでデザイナーのやっていき・のっていきを創出する
普段の業務ではなかなか詳しく知ることのできない他の部署・サービスのデザイナーの取り組みを知ることで、さらに自分たちのサービスでもやっていこう!といった動きにつなげたり、どんどん別のサービスや全社規模に取り組みをスケールしていくことができます。ペパボではこうした新しいことを始めていったり、その取り組みに賛同し真似してのっかていく姿勢を「やっていき・のっていき」と呼んでいます。
3. ペパボのデザインプリンシプルに則ってデザイナーの活躍を称え合うことでさらにモチベーションを向上させる
前述のとおり普段の業務ではなかなか他のデザイナーの取り組みについてつぶさに知ることができなかったりします。こうした称え合う機会を設けることで、褒められた側もさらにやっていこうという気持ちが高まり、褒められた人をモデル規範として周りのデザイナーもモチベーションを高めることができます。デザイナーの活躍をフィーチャーする基準としては、ペパボ内で共有されているペパボのデザインプリンシプルが参照されています。
「Designer All Hands 2020.12」での共有内容
今回のDesigner All Handsでは次のような共有が行われました!
1. これまでの取り組みについて
前回のDesigner All Handsではデザイン経営の導入と実践に力を入れていくぞ!という表明があり、その導入にあたって経営資源としてのブランドの強化とデザインシステムの継続的開発に取り組んでいきましょう、という内容が共有されていました。それを踏まえて今回のDesigner All Handsでは、これまでの取り組みとして主に次の2つについて共有されました。
- ブランド強化の一環として広告をどう扱うべきか、カラーミーショップのCM制作の事例をもとにフレームワーク化した考え方
- 継続的に開発しているペパボの共通基盤デザインシステム「Inhouse」の開発進捗
広告における取り組みについては、実際に取り組んでいるデザイナーに記事にしてもらう予定です!
2. デザイナーの社外アウトプットについて
ペパボでは「私たちが大切にしている3つのこと」のひとつとして「アウトプットすること」があります。これまで組織に属する個人のアウトプットにおいては、インターネットが普及したことにより個人の情報発信が組織ブランドと紐づき、「〇〇さんがいる会社!」のような形で組織のプレゼンス向上や採用強化につながったり、逆にそうした個人のアウトプットを組織の看板のもとに仕組み化しようとさまざまな会社で技術ブログなどが誕生するといった歴史がありました。(このテックブログもそうですね!)しかし、今ではSNSによってさらに個人ブランドがブーストされやすい環境に変化しているなどの状況もあります。
そうしたなかで、ペパボのデザイナーのアウトプット方針としては、基本的にはアウトプットの方法や場などは個人の判断に委ねられる自由なものであり、個人としての独立性連続性を大切にしてもらいながら組織ブランドに還元できるような体制づくりを行っていきましょう、という内容が共有されました。そしてそのうえで、ペパボのデザインの取組みや、ペパボのデザイナー個人のプロジェクトにおけるクレジットや社外アウトプットのキュレーション、ペパボ内で作成したガイドラインやリソースの公開を目的とするペパボのデザインサイトを今後つくっていきます、という表明がありました。
3. サービスデザインについて
サービスデザインとはなにか、デザイナー全員の認識をすり合わせるための基礎的な概要の紹介と、具体的にペパボではどのようにサービスデザインに取り組んでいるのか、SUZURIの辞書、ステークホルダーマップの活用の2つを事例に共有がありました。サービスデザインの基礎概要についてはこの後詳しくご紹介したいと思います。
4. ほめほめタイム👏
ペパボのデザインプリンシプルを体現したデザイナー8名が、具体的な取り組みとともに発表されました!
サービスデザインとは?なぜサービスデザインが必要なのか?
今回は共通言語としてデザイナー全員の認識共有を図りたいトピックの1つとして、「サービスデザイン」についての共有がありました。そこでここからは、デザイン戦略チームのsizuccaさんが共有したサービスデザインとは?の基礎について、大まかにどのような内容かここで紹介したいと思います。
サービスデザインとはなにか。それを紐解くためにまず「モノ」と「サービス」の歴史をさかのぼってみましょう。
2011年の「Service Design Network Global Conference」の基調講演で提示された時代背景を表す年表によると、1900年〜1960年は「製造」の時代、1960年〜1990年は「流通」の時代、1990年〜2010年は「情報」の時代、そして2010年以降は「顧客」時代、というように、時代のそれぞれの段階により産業において重視されてきた要素は変化していることを指し示しています。
以前はモノ・コンテンツを売ることがメインの時代でした。単に形をつくりそれを流通させていた頃は、なにかを実現するための「機能」自体が不足していたため、その機能を有するモノ自体に価値があり、モノの機能や品質が優れていると価値が高いと判断されていたのです。しかしあらゆるモノが流通し普及すると、「機能」があることは当たり前で、モノだけで満足させることやモノのみによって差別化することは困難になりました。そこで挙がってくる課題は「どうしたら利用者に満足してもらえるか・長く使ってもらえるか」といった顧客視点のものでした。また、技術革新によっていつでもどこでもさまざまな情報へアクセスできるようになったことで、顧客がCMなどを通じて企業が発信する一方向からの情報を享受するだけではなくなりました。ここで重要になってくるのがサービスデザインです。
「サービス」をWikipediaで検索すると次のように書いてあります。
サービス(英: service)あるいは用役(ようえき)、役務(えきむ)とは、経済用語において、売買した後にモノが残らず、効用や満足などを提供する、形のない財のことである。
出典:サービス - Wikipedia
顧客の時代となって久しい今、モノだけではなく顧客への価値体験提案をデザインする必要が出てきましたが、それは目に見えないコトのデザインも含みます。望ましい顧客体験とそこから生まれる価値を実現するためにはさまざまな「モノ」と「コト」が統合した「サービス全体」をデザインすることが必要であり、その方法論として求められているのがサービスデザインです。このサービスデザインの考え方は、インターネットを通じてさまざまなサービスを提供する私たちペパボにとっても重要です。
ペパボ内で共有されている、ペパボのデザイナーがデザインしているものの関係を表した「ペパボデザインスキーム」で見ると、サービスデザインは次の図の部分に位置づけられています。私たちはツールやコンテンツといった領域横断的なデザインを通してブランドに作用したり、体験価値の提案を行っています。あくまで体験価値の提案であり、体験そのものを直接デザインすることはできません。なので、提案した体験価値が顧客の利用文脈にフィットし、実際に利用され行動に変化が起きることで価値が「共創」されるのです。
具体的に音楽産業の事例で考えてみましょう。昔は音楽といえばレコードから始まり、それが小型化されてCDで流通しているのが当たり前でした。しかし1990年代以降はインターネットが普及し、さらに2010年以降はスマートフォンが普及し、いつでもどこでも情報にアクセスできることが当たり前の時代になりました。そうした技術革新による体験の文脈の多様化も相まって、2001年にはAppleでiTunesがリリースされ、当時のMacintoshや携帯音楽プレーヤーのiPodの音楽再生・管理ソフトとしての役割をもつようになります。CDやMDといったモノを持ち歩かなくてもどこでもインポートした音楽が聴ける、という顧客体験重視の付加価値をもったサービスとして売り出せたのです。そして現在ではスマートフォンをはじめとするモバイル端末からいつでもどこでも情報にアクセスできるようになったことであらゆるタッチポイントから利用できるサブスクリプションモデルのサービスが主流となり、Apple MusicやSpotifyといった音楽配信サービスでは、スマートフォンやスマートスピーカーなどのモノを通じて「どこでも音楽を楽しむ生活」という体験価値を主軸にするサービスを提供しています。
ここまでくるとモノにサービスで価値を付加して売るのではなく、サービスを売ってそのサービスを構成する一要素としてモノがある、という構造ですね。この構造は「サービス・ドミナント・ロジック(Service Dominant Logic: S-Dロジック)」と呼ばれていて、逆にそれ以前のモノ自体に価値があってモノをつくって販売するという考え方は対比的に「グッズ・ドミナント・ロジック(Goods Dominant Logic: G-Dロジック)」と呼ばれています。
このS-Dロジックに基づくビジネスでは、体験価値はモノに「付加」される価値ではなく、事業の根幹をなす本質的な価値です。ゆえに、サービスデザインにおいては顧客理解にもとづく体験価値提案のデザインだけでなく、ビジネスにおける市場性・実現性・競合優位性・継続性…といったビジネス要件も同時に満たしている必要があります。顧客理解とビジネス要件の実現、両方のバランスを取って価値提案しなければサービスデザインとして成立しないのです。
こうしたサービスデザインの考え方を理解することで、私たちペパボのデザイナーも顧客体験の向上と価値共創のためにどのようなことが必要なのか考えることができます。その具体的な事例については、また後日各サービスのデザイナーから紹介してもらいたいと思います!
まとめ
以上、Designer All Handsの紹介と今回開催した「Designer All Hands 2020.12」の模様を、mewmoがお届けしました!
こうした共有会の中で共通言語を増やし、これまでの取り組みや今後の取り組みに目を向けることで、納得感を持ってデザイン組織の一員としてもっとやっていきたいな!という気持ちになれるので、毎回とても楽しみなイベントです。
この記事ではサービスデザインの概要についてざっくりとご紹介しました。実際に今ペパボでどのようにサービスデザインに取り組んでいるのか、具体的な事例内容は後日各サービスの登壇者に記事を書いてもらう予定です!みなさまぜひそちらもお楽しみに〜〜
それではまた!