デザイン デザインリサーチ

GMOペパボのデザインリサーチやっていき 2020

デザイン デザインリサーチ

EC事業部 シニアデザイナー 小山田翔子@chocolatina です。カラーミーショップでユーザー体験を考えながらUIの実装までを行なっています。最近は狩猟免許の取得に熱意を燃やしています。

はじめに

GMOペパボのデザイナーには「エキスパートスキルエリア」というものがあり、私は「デザインリサーチ」を専攻しております。(「エキスパートスキルエリア」について詳しくはこちらの記事で紹介しています)。

今回のこの記事では、先日の社内デザイナーMTGにてGMOペパボのデザイナーたちに共有した「デザインリサーチやっていき」について紹介します。

背景

デザイナーの面接に立ち会ったり、社内のデザイナーと面談する中で「ユーザーに寄り添いたい」と言った発言をよく耳にします。「ユーザーに寄り添う」という言葉をもう少し具体的に解釈すると、ユーザーの声を聞いて問題を理解しそれを解決する、ということになると思いまが、現状のペパボの実情として、3つの問題があります。

1つ目は、ユーザーの声聞く機会というのが少なく、誰に、どうやって、どんなことを、聞けばいいのかわからないということ。2つ目に、せっかくユーザーの声を聞いても、それが正しいか自信がない。聞いた対象は極端なユーザーだったのでは?と思ってしまう、ということ。最後に、サービスを作るとき、ユーザーの声というのは定性的で計測しづらく、どうしてもビジネスやシステム要件を重視してしまい、開発プロセスから見過ごされがちであるということ。多くのデザイナーは形にするところが楽しく、早く世の中にリリースしたい、という気持ちがあるでしょう。

しかしながら、ユーザー要求がしっかり定義されていないと、ユーザーが幸せになるシステムを作ることができません。「ユーザーに寄り添う」はただ想像することではなく、根拠を持って想像上のユーザーと現実のユーザーを近づけていくことです。では具体的にはどの様なアプローチがあるでしょうか?

想像上のユーザーを現実のユーザーに近づけるには

根拠を持って想像上のユーザーを現実のユーザーに近づけるには、ただユーザーに会う、自分でサービスを使ってみる、それ以外にも、様々な方法があり、スキルが必要です。

例えば、定量的(数字で測れるもの)の測定に際しては、行動ログについてはGoogle AnalyticsやHotjar、ユーザー状態については、データベースのSQL解析や、顧客管理ツールが利用できます。定性的な、ユーザーの声などについては、ドッグフーディングや、ユーザーインタビュー、アンケート、ヒューリスティック評価、ユーザビリティテスト、お問い合わせ文言の分析などが利用できます。

以上のようなツールを使いこなすスキルを高め、ユーザーに対する共感、理解を深めた上で課題の定義を行い、戦略の課題に対してアプローチしていくことが重要です。

ペパボのデザイナーへのアンケート結果

詳しい結果は差し控えますが、上記のようなデザインリサーチスキルの測定を社内で行なったところ、デザイナー全員が、先ほど述べたようなツール全てを使いこなし、リサーチを実行できている、という状態は、まだまだ遠いことが明らかになりました。特に改善したいポイントがいくつか見つかり、こちらについては後日、別途勉強会を開催していく予定です。

例えば、Figmaを使える、Sassについて理解が深い、というのは、形にするスキルと言えますが、その形を正しく作っていくために、リサーチスキルはデザイナー全員が身につけておくべきスキルといえ、手法が引き出しに入っていて、すぐに使える、もしくは、誰かの道具をすぐ借りられる状態(借りるべきと判断できる状態)にしておくべきです。デザイナー全員が、カジュアルにリサーチができる状態を目指していきます。

デザインリサーチやっていきについて

上記について勉強会の時間を確保し、社内での理解を得ていくため、弊社CDO @kotarok や デザインリサーチエキスパートスキルの仲間 @keita_kawamoto と相談し、「デザインリサーチやっていき」と呼ばれる物を作成しました。

全体の図としてはこうなります。

デザインリサーチやっていきについて全体図。フロー状になっていてる。「育成+ノウハウ共有により定量・定性調査が適宜実施され、実態が明らかになり、ユーザーへの共感が可能になる。するとターゲット・課題が可視化され成果物の角度も高まりパートナー(社員)モチベーションも上がる。するとサービスがユーザーに与えるインパクトが大きくなる、サービス価値が高まりユーザーが増える。すると、ペパボの社会的価値が大きくなる」

人材と知見をストックする

デザインリサーチやっていきの「人材と知見をストックする」についての図。デザインリサーチ人材とリサーチノウハウの共有により、定性/定量評価が実施され、ユーザーへの共感が可能になる。

デザインリサーチを「やってみたい」という人を増やします。これについては、デザインリサーチチャンネルでの支援、ランチタイムなどに気軽にリサーチについて相談できる会の開催、その他、Slackなどを観察し、デザインリサーチの生きる場面をサポートします。デザインリサーチ手法のレビューなども行っていきたいと思います。

また、あらゆるノウハウの共有ということもしていきます。これは、様々な実績共有やドキュメント化をしていくことにより、先ほど言った相談の場面で、その回答のクオリティを上げることができるでしょう。また、自発的に勉強したい、という方の支援にもなるはずです。各種勉強会の登壇支援なども行いたいと思います。

定量/定性調査が適宜実施される

デザインリサーチやっていきの「定量/定性調査が適宜実施される」ついての図。ユーザーへの共感をすることで、課題を抽出でき、成果物の効果が高まる。

例えば、プロジェクトごとにアンケート必ずやりましょう!ユーザーテスト必ずやりましょう!というのは意味がありません。ターゲットとその課題を考慮し、最適な手法が選択され、かけられる時間とコストを鑑み、最適な手法を選択し調査ができ、サービスに活かせる形にできる状態を目指します。それにより、ユーザーの実態が明らかになり、ユーザーへの共感が深まるでしょう。

ここで言うユーザーというのは、既存ユーザーだけではなく、サービスに関わるあらゆる事象の中にいる、潜在ユーザーや離脱ユーザーです。そのユーザー像や行動データ、インサイトなどを適切に汲み取れるようにします。

ターゲットと課題が明確になる

デザインリサーチやっていきの「ターゲットと課題が明確になる」についての図。サービスが世の中に与える影響が大きくなり、サービスを使う人も増え、ペパボの社会的価値が増大していく。

上記の努力により、誰のどのような課題を解決するのか、ということが明確になっていくはずです。この努力なしでは、誰にも使われないサービスを何ヶ月もかけて構築する、誰にも刺さらないLPをデザインしてコーディングしてデプロイする、のような悲劇が起こるでしょう。我々はそれぞれの部署の戦略課題にアプローチするために日々デザインを行っています。リサーチを行うことで、成功の確度を高めることができます。

きちんとリサーチをして根拠立てて作られたサービスは、ユーザーに与える価値も大きく、サービス価値が高まると、ユーザーも増えていくでしょう。「サービス価値 × ユーザー人数」が掛け算で起こっていきます。結果、GMOペパボの社会的価値(我々の仕事が社会に対して与えるインパクト)が大きくなり、この暗い世の中を明るくしていくことができると信じています。

そして、誰に向けてサービスを作っているのかを理解することは、モチベーションの向上を生みます。朝起きて、今日、仕事頑張ろう!と全員が思い、今日もユーザーさんのためになることしたな、と思って仕事を終えて欲しい。その施策をなぜやるか、どうやるか、明確になることで、パートナー(社員)のやる気が高まります。また、この循環の成功が知られれば、高スキルなデザインリサーチ人材も獲得でき、この動きがさらに加速していくでしょう。

目指す組織体制

デザインリサーチやっていきの「ターゲットと目指す組織体制」について。各部署にデザインリサーチ専門性の高い人材が最低一人いて、すぐ相談できる体制を目指す。

全てのデザイナーが、まずはある程度のリサーチスキルがあり、各部署にデザインリサーチ専門性の高い人材が最低一人いて、すぐ相談できる体制を作りたいと思います。さらに、デザイン戦略チームにデザインリサーチ顧問的な人がおり、困ったときはすぐ相談できる体制を目指します。

組織としてデザインする

我々は組織として、個人の能力に依存せず、カジュアルにデザインリサーチをできる体制を作り、サービスをより価値あるものにしていきます!