DX SUZURI

DX Criteriaの実践とその活用について

DX SUZURI

この記事の担当の黒瀧です。最近は在宅勤務が続いているので料理にハマっています。得意な料理はベーコンエッグです。今回はDX Criteriaというアセスメントツールを使って自分の事業部を診断してみたので、その結果とプロセスを共有します。

DXとは

DXには2つの意味があります。1つ目はDigital Transformation (企業のデジタル化のDX)です。経営に対してデジタル技術を用いたビジネス変革ができているか?という観点で、経済産業省のDXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~においても、あらゆる産業の中にデジタル技術が使われていく状況でDXをスピーディーに進めていくことが大事であると述べられています。もう1つはDeveloper eXperience (開発者体験のDX)です。こちらは開発者にとって、働きやすい環境と高速な開発をするための文化・組織・システムが実現されているか?という観点です。日本CTO協会ではこの2つを一体で捉えた基準を作っています。

私自身も2つのDXを一緒に考えることはとても大事なことだと思っています。開発者が楽しく生産性を高めて開発することが良いサービスを継続的に運用していくことに繋がると思います。

DX Criteria とは

日本CTO協会が作成したアセスメントツールです。DXの進捗度を自己診断できます。 詳しい説明はDX Criteria - 「2つのDX」とデジタル時代の経営ガイドラインに書かれていますが、5つのテーマと8つのカテゴリ、8つの項目をかけ合わせて、全部で320個を自己診断するツールです。今回はこの診断結果と考察及び今後の取り組みについて書いていきます。

DX Criteriaの構造と観点 DX Criteria - 「2つのDX」とデジタル時代の経営ガイドラインより

各事業部においてDX Criteriaを実施

今回は各事業部と事業部を横断した技術を扱う技術部においてDX Criteriaを実施しました。実施概要は以下のとおりです。

実施概要

  • 診断を行う人: 各事業部のシニアエンジニアリングリード・エンジニアリングリードが約一時間で360項目に対して実施
    • SUZURI事業部のdesignの項目に関してはシニアデザイナの@putchomに評価してもらいました
  • 実施日時と回答時間: 2019年12月下旬、時間は約1時間で実施、1項目10秒くらいで回答しました
    • 項目が多いので、時間を決めて実施するのをオススメします!

結果

今回はSUZURI事業部のDX Criteria結果をそのまま載せていきます。実施できているもの。当たり前になっているものは青くなっています。アンチパターンは逆転項目になっているので、Noだと青くなります。青いところは1点として計算します。実施したけど不完全だったり、やめたものに関しては灰色になっています。こちらは0.5点として計算します。実施できていないものは0点ということで赤くなっています。

DX Criteriaの結果1

縦の項目に関して

得点の割合は以下のようになりました。評価する項目の個数が違うので、得られた得点を実施項目数で割って割合を出しました。メトリクスの計測が一番低い結果になりました。

  • メトリクス計測 12 / 40 = 0.300
  • 学習と改善 17 / 40 = 0.425
  • プラクティスと習慣 61 / 120 = 0.508
  • アンチパターン 74 / 120 = 0.617

横の項目に関して

横のテーマごとの得点についてはdataが17.0と低い値になりました。それ以外のテーマに関しては、どれも30点台の得点でまずまずの結果かなと思います。

DX Criteriaの結果2

考察

実施結果を眺めて考察をしました。最初は全体の傾向を見て、その後に細かい項目を見ていくと良いと思います。 縦の項目はメトリクスの計測と学習と改善が赤の割合が多いです。横のテーマに関してはdataの項目が赤の割合が多くなっています。

DX Criteriaの結果1

カテゴリーの中で6点以上の項目は以下のとおりです。

DX Criteriaの結果1

実施できている

実施できているもの、当たり前になっているものの一例を挙げます。

  • アンチパターンに対する対策
    • Scrapboxの活用、雑談会
  • バージョン管理、継続的インテグレーション
    • 2012年くらいから技術基盤チームを中心に整備してきた
  • セキュリティ
    • セキュリティ対策室、セキュリティキープの開催
  • 顧客接点のデジタル化
    • 元々Web系の企業なので、得点が高い
    • メトリクス計測とタッチポイントを増やすのが今後の課題

縦のアンチパターンのところに関しては、data以外は得点が高いです。これはチーム内コミュニケーションを加速させる、GMOペパボSUZURI事業部のScrapbox活用法のインタビューに書かれていますが、Scrapboxを活用して情報共有をうまくやっていこうという取り組みが実施されているので、得点が高くなっています。

以下にDX Criteriaから2つの評価項目を挙げましたが、このScrapbox活用はコミュニケーションツールのアンチパターンである、オンラインでアクセスできる議事録を取っていないや、タスクマネジメントの他部署からの依頼が明確なタスクツールではなく、担当者へのダイレクトメール/メッセージ/口頭など透明性のない形で行われているといったものに対して有効であることがわかりました。

コーポレート3

コーポレート3

また、バージョン管理・継続的インテグレーションに関しては、過去に弊社VPoE(VP of Engineering)の@hsbt技術的負債との付き合い方にて書いていますが、2012年からバージョンコントロールやデプロイ基盤の整備をおこなってきた結果、今では全事業部ではあたりまえの事になっているため、得点が高くなっています。

実施できていない

今度は点数が低い、どちらかというと実施できていない項目の例をいくつか挙げます。

  • メトリクスの計測
    • 指標(Indicator)と目標(Objective)の設定
    • 各指標の計測と管理
  • データ活用
    • ユーザーの行動ログ活用
    • データを活用した意思決定

メトリクスの計測に関しては全体的に点数が低くなっています。例えばチーム評価項目の中で、構想から要件に落ちるまでのリードタイムの計測やチームのベロシティの計測などはあまりできていなかったように感じられます。システム評価項目に関してもSLI(サービスレベル指標)やSLO(サービスレベル目標)の設定などはできていませんでした。

データ活用に関してはログの活用やデータを活用して意思決定するところはこれからの課題だと感じています。今後は様々なメトリクスを計測し、ファクトをベースに組織学習のサイクルを回して、みんなが作ってきたSUZURI事業部の良い文化を定量的なデータと合わせて、次のアクションを決めていきたいです。

すでに各チームでは様々な取り組みをおこなっているので、今後SUZURI事業部のプロダクトチーム・SREチームの取り組みに関しても継続的にテックブログで紹介していきます。お楽しみに!

今後の取り組みについて

得られた結果を元に、DXの観点から2020年に注力すると良さそうなポイントを考えてみました。そして、今年はメトリクス計測とデータ活用を軸にやっていくことにしました。開発者が何か取り組む時は「メトリクスの計測どうしようか?」「データ活用の観点ではどうか?」みたいな事を考えながら取り組むと良いと思います。具体的にはAPIの改善をする時に社内外のAPI利用者にユーザビリティについてヒアリングしたりアンケートを行ってみるような感じです。

今回の評価項目の中には個人単位ではできているものもいくつかありました。しかし、その人のモチベーションにのみ依存したりすることは継続的なサービス運営においてはリスクに繋がると思いますので、これからDX Criteriaのような基準を活用し、私達の日々やっていることが業界的にはどうなのかを照らし合わせながら、組織全体として継続的に実行できるようにしていきたいと思います。

半年後、一年後にDX Criteriaを再実施して、1年経ってどのような変化があったかを追っていきたいと思っています。ただ得点が上がった・下がったということを見るのではなく、どういうアクションがあった結果としてどのように得点が変わったのか、プロセスと結果をセットで報告したいと思います。

まとめ

DX Criteriaを実施した結果をまとめ、SUZURI事業部の実施結果を公開しました。2020年はDX Criteriaを活用して開発者のみなさんが楽しく日々の活動に取り組めるよう、メトリクスの計測とデータ活用を意識しながらサービス改善及び開発を進めていきます!

各企業の事例報告を集めて、各社の良いところを取り込んでいくことで業界全体の開発者体験と企業のデジタル化を加速させていけそうですね!みなさんの事例も知りたいので、テックブログやSNSで是非教えて下さい!