thoughtbot/rcm は、thoughtbot社が開発したdotfileの管理を行うためのシェルスクリプト群です。似たようなツールとして technicalpickles/homesick がありますが、homesickがRubyGemsなのに対してrcmはシェルスクリプトのみで作られており、依存が少ない点がメリットとして上げられます。
「dotfiles」とは
dotfilesとは、Unix系OSでユーザのホームディレクトリにある .
(ドット)から始まるファイル群の総称です。.bashrc
などのプレーンテキストの設定ファイルや、 .vim/
や .emacs.d/
等の特定のアプリケーションの設定を保存ディレクトリ、 .config/
のような様々なアプリケーションの設定を保存する親ディレクトリなどがあります。
シェルやエディタをどの程度カスタマイズするかという点については様々な考え方がありますが、dotfilesは「普段の自分の環境」を構成する大切な要素の一つであることは間違いありません。
「dotfilesを管理する」とは
GitHubを「dotfiles」で検索 すると、多くの人がdotfilesをバージョン管理していることがわかります。
さて、前述した通りdotfilesというのはホームディレクトリにあるファイル群です。通常、バージョン管理はあるディレクトリの中を対象として行いますが、dotfilesをバージョン管理するためにホームディレクトリをまるごと管理しようとすると、.gitignore
を駆使してもかなり煩雑なものになってしまうでしょう。
そこで、多くの人はシェルスクリプトや何らかのスクリプト言語で書かれたプログラムを用意し、別のディレクトリにあるdotfilesからホームディレクトリにsymlinkを作成するような運用をしています。そうすることで、ホームディレクトリそのものをバージョン管理することなく、dotfilesだけを管理することができるようになります。この「symlinkを作成する」ことをサポートするツールがrcmです。
例) 私のホームディレトリの一部。.zprofile
と.zshrc
がsymlinkになっています。
lrwxr-xr-x ... .zprofile -> /Users/kenchan/dotfiles/zprofile
drwxr-xr-x ... .zsh
-rw-r--r-- ... .zsh-update
-rw------- ... .zsh_history
lrwxr-xr-x ... .zshrc -> /Users/kenchan/dotfiles/zshrc
rcmの4つのコマンド
rcmは4つのコマンドでdotfilesの管理を助けてくれます。それぞれ簡単に紹介します。
rcup
rcup
は、rcmで管理しているdotfilesのsymlinkをホームディレクトリに作成するためのコマンドです。新しいマシンをセットアップするときなどに、dotfilesを手元に持ってきてから最初に叩くコマンドはこれになるでしょう。
mkrc
mkrc
は、ホームディレクトリにあるファイルを新しくrcmの管理下にするコマンドです。
例えば、.bashrc
を新しくrcm管理にする場合は以下のようになります。
$ ls -alh .bashrc
-rw-r--r-- ... .bashrc
$ mkrc .bashrc
$ ls -alh .bashrc
lrwxr-xr-x ... .bashrc -> /Users/kenchan/dotfiles/bashrc
rcdn
rcdn
は、rcup
で作成されたsymlinkを削除するコマンドです。symlinkが削除されても実ファイルは残りますので、rcup
しなおせば戻すことができます。
lsrc
lsrc
は、rcmで管理されているファイルの一覧を表示するコマンドです。rcmは複数のディレクトリを扱うこともでき、symlinkの実体がどのディレクトリにあるかも確認できます。
下の例では、.bashrc
の実体はdotfiles-local
ディレクトリにあり、.gitconfig
はdotfiles
ディレクトリにあることがわかります。
$ lsrc
/Users/kenchan/.bashrc:/Users/kenchan/dotfiles-local/bashrc
...
/Users/kenchan/.gitconfig:/Users/kenchan/dotfiles/gitconfig
...
rcmのはじめ方
まだdotfilesを管理していない人は、rcmのインストール方法を見ながらインストールし、mkrc
で管理したいファイルを追加していくとよいでしょう。デフォルトでは~/.dotfiles
というディレクトリに実体がコピーされ、ホームディレクトリにはsymlinkが作成されます。あとは~/.dotfiles
をバージョン管理し、GitHub等にpushしておけばよいでしょう。
また、rcmは.rcrc
ファイルという設定ファイルを見ることになっています。ここにDOTFILES_DIRS=(ディレクトリ)
という設定を書くことで、dotfilesの実体を置くディレクトリを指定できます。dotfilesをdropboxで管理したいというような場合は、この設定を使うと簡単に実現できます。
もし「これから環境を作っていきたいけどどこから手をつけていいかわからない」という状況であれば、rcmの開発元であるthoughtbotのオススメ設定( thoughtbot/dotfiles )をcloneして使いはじめるのもオススメです。
既に別の方法でdotfiles管理をしているという人がrcmに移行する場合は、少し工夫が必要かもしれません。rcmは「ディレクトリは作成し、ファイルはsymlinkにする」ということを行います。もし、現在の管理方法がディレクトリもsymlinkにするような仕組みになっている場合、その配下にある意図しないファイルまで管理下に置かれてしまう可能性があります。特に、GitHub等でdotfilesを公開している人はcommitやpushの段階でよく確認しましょう。
おわりに
私は、少し前まで自作のスクリプトでdotfilesのsymlinkを管理していましたが、特に.config/
配下の管理に限界を感じていました。それをWeb日記( fishを使いはじめた けんちゃんくんさんのWeb日記 )に書いたところ、 @ursm さんからrcmを教えてもらい、試してみたところとても便利だったのでrcmに移行しました。
もし、私と同じように現状の管理方法に不満がある方や、これからdotfilesを管理しようという人は、ぜひrcmを試してみてください。