こんにちは! GMO ペパボのグループ会社である GMO クリエイターズネットワークのよしだです。
今回は、社内で使われている 2 つの決裁書承認システムと Slack を連携させて効率化した話の続きとして、決裁書承認システムと Slack を連携させた後、承認フローの階層追加に対応した話をします。
前回のおさらい
さて、本題に入る前に前回の記事で掲載したフロー図をおさらいしておきましょう。
承認フローの階層追加の説明をさせていただくにあたって、重要な部分です。
登場人物
登場人物は以下の通りです。
申請者
フリーナンス管理画面から決裁書を申請する弊社パートナーを指します。
フリーナンス
「フリーランスを、もっと自由に。」との想いからフリーランスのお客様向けに保険やファクタリングを提供する、弊社サービスです。 前回の記事で、フリーナンス管理画面から X-point 経由で決裁書を作成できるようにしました。
X-point
株式会社エイトレッドの提供する電子稟議システムX-point Cloudです。 前回の記事で、承認フローは X-point の責務として実装しました。
Slack
弊社業務で利用しているビジネスチャットツールです。 前回の記事で、決裁書の承認を Slack から実施できるようにしました。
決裁書提出の流れ
申請者が決裁書を提出するまでの流れは下記となります。
- 申請者はフリーナンス管理画面から「決裁書作成」ボタンを実行
- フリーナンスは X-point に決裁書を下書きで作成
- フリーナンスは決裁書の ID から X-point の決裁書編集画面の URL を返却
- 申請者は決裁書編集画面にリダイレクトし、決裁書を提出
決裁書提出後の流れ
決裁書提出後は X-point からフリーナンスが Webhook を受信し、フリーナンス経由で Slack や X-point と連携します。
- フリーナンスから Slack に承認依頼を送信
- Slack から承認操作を実施し、フリーナンスで受信
- フリーナンスから X-point へ決裁書の承認依頼を送信
- X-point からフリーナンスへ承認完了の Webhook を受信
今回のテーマ
ある日の午後、「来月から承認フローの階層を追加することになった」と連絡がありました。 決裁書の承認者として、フリーナンスで扱う全ての決裁書の承認フローに、1 部門増えるとのことでした。
来月までに承認フローの階層を増やさなければなりません。どこを変更すればよいでしょうか。
修正箇所
前回の記事で、承認フローは X-point の責務として実装しました。 そのため、承認フローの階層追加は X-point で実施できます。
しかし、フリーナンスでは X-point から送信される、承認フローの階層毎にそれぞれの Slack チャンネルに対して承認依頼を送信しています。 下記、修正箇所のフロー図部分は修正が必要です。
承認依頼を送信(変更前)
一部ぼかしていますが、フリーナンスで承認フロー毎の Slack チャンネルに承認依頼を送信しているのは下記部分です。
const MANAGER_APPROVAL = 1;
const EXECUTIVE_OFFICER_APPROVAL = 2;
const PRESIDENT_APPROVAL = 3;
/**
* X-pointからのWebhook
*/
public function handleWebhook($documentStatusCode, $payload)
{
// 決裁書のステータスから、次の承認者が存在する場合は次の承認者へSlack承認依頼送信
if ($documentStatusCode == self::XPOINT_STATUS_APPROVING) {
// 承認フローの階層とSlackチャンネルのマッピング
$channelMap = [
self::MANAGER_APPROVAL => XPOINT_SLACK_CHANNEL_MANAGER,
self::EXECUTIVE_OFFICER_APPROVAL => XPOINT_SLACK_CHANNEL_DIRECTOR,
self::PRESIDENT_APPROVAL => XPOINT_SLACK_CHANNEL_PRESIDENT,
];
// 現在の承認フロー
$currentStep = $payload['document']['step']['current'] ?? null;
// エラーチェック
if (is_null($currentStep) || !isset($channelMap[$currentStep])) {
$this->log('[XpointWebhook] パラメータが不正です。', 'error');
return;
}
// Slackに送信する承認依頼の文言やボタンを生成
$message = $this->makeSlackTemplateForApprovalRequest($channelMap[$currentStep], $payload);
// Slackへ承認依頼送信
$this->SlackNotification->postMessage($message);
}
}
MANAGER_APPROVAL
,EXECUTIVE_OFFICER_APPROVAL
,PRESIDENT_APPROVAL
は承認フローの何階層目かを表すもののため、整数が入ります。XPOINT_SLACK_CHANNEL_MANAGER
,XPOINT_SLACK_CHANNEL_DIRECTOR
,XPOINT_SLACK_CHANNEL_PRESIDENT
は各 Slack チャンネル ID が文字列で入ります。
承認依頼を送信(変更後)
承認フローの階層と Slack チャンネルのマッピングが追加されれば良いため、$channelMap
の内容を変更します。
また、併せて定数の追加と階層番号の修正を行います。
const DEPARTMENT_APPROVAL = 1; // ←今回追加
const MANAGER_APPROVAL = 2; // 番号変更
const EXECUTIVE_OFFICER_APPROVAL = 3; // 番号変更
const PRESIDENT_APPROVAL = 4; // 番号変更
/**
* X-pointからのWebhook
*/
public function handleWebhook($documentStatusCode, $payload)
{
// 決裁書のステータスから、次の承認者が存在する場合は次の承認者へSlack承認依頼送信
if ($documentStatusCode == self::XPOINT_STATUS_APPROVING) {
// 承認フローの階層とSlackチャンネルのマッピング
$channelMap = [
self::DEPARTMENT_APPROVAL => XPOINT_SLACK_CHANNEL_DEPARTMENT, // ←今回追加
self::MANAGER_APPROVAL => XPOINT_SLACK_CHANNEL_MANAGER,
self::EXECUTIVE_OFFICER_APPROVAL => XPOINT_SLACK_CHANNEL_DIRECTOR,
self::PRESIDENT_APPROVAL => XPOINT_SLACK_CHANNEL_PRESIDENT,
];
// 現在の承認フロー
$currentStep = $payload['document']['step']['current'] ?? null;
// エラーチェック
if (is_null($currentStep) || !isset($channelMap[$currentStep])) {
$this->log('[XpointWebhook] パラメータが不正です。', 'error');
return;
}
// Slackに送信する承認依頼の文言やボタンを生成
$message = $this->makeSlackTemplateForApprovalRequest($channelMap[$currentStep], $payload);
// Slackへ承認依頼送信
$this->SlackNotification->postMessage($message);
}
}
Slack チャンネル ID であるXPOINT_SLACK_CHANNEL_DEPARTMENT
は.env
から取得しており、Secret Manager での設定が必要ですが、本筋からは外れますので割愛します。
切り替え作業
今回対象となる承認フローは動かなくなると業務が止まってしまいます。 そのため、確認をしながら慎重に移行する必要がありました。
切り替えの時間は下記の点から、夕方 17:00 以降としました。
- 承認フローが使われるのは平日 17:00 迄
- 動作確認を実施するため、関係者の業務時間外である夜間は避けたい
手順としては下記の通りです。
- 検証環境での切り替え
- 本番環境での切り替え後、戻す
検証環境での切り替え
本番とは別の検証用 X-point に新しい決裁書を作成します。 その後、修正したコードを反映し、決裁書作成 ~ 承認までの動作確認をします。
Slack への通知も検証用のチャンネルに対して行われます。
本番環境での切り替え後、戻す
決裁書作成が実行されない時間帯に、修正したコードを反映し、決裁書作成 ~ 承認までの動作確認をします。 動作確認は実際に業務を行う、申請者と承認者に実施してもらいました。
作成した決裁書はテストデータとして破棄し、コードを元の状態に戻します。
本番環境での切り替え
予行演習を実施した際に、申請者と承認者に対してテストでの確認点をうまく伝えられず、確認に時間がかかってしまっていました。 そのため、今回は以下の点をテスト観点として共有しました。
- 決裁書作成時に新たに追加した Slack チャンネルへ承認依頼が送信されている
- 新たに追加した Slack チャンネルで承認を実施した際に、X-point の承認状態も連動している
- 新たに追加した Slack チャンネルで承認を実施した際に、次の承認者の Slack チャンネルへ承認依頼が送信されている
- 最後の承認者の Slack チャンネルで承認を実施した際に、X-point の承認状態も承認完了になっている
修正したコードを反映し、テスト観点に沿って動作確認をしてもらいました。予行演習よりもスムーズに実施でき、トラブルなく完了できました。
全体を通して感じたこと
承認フローを X-point の責務にすることで、承認者や承認フローの階層変更にも柔軟に対応できました。
しかし、承認フローの階層と Slack チャンネルをマッピングしている部分はハードコーディングであったため、コードの修正は必要です。 今後はマッピング部分もデータベースで保持することにより、コードを修正することなく対応できるのではないかと思います。
また、切り替え時の予行演習をすることで、リリース時の課題を明確にできたのは良かった点です。 今後も継続して行っていきます!
GMO クリエイターズネットワークでは、プロダクト開発職種の採用をおこなっています!
フリーナンスでは今、プロダクト開発組織を立ち上げていこうとしている最中です。
ソフトウェアエンジニアとして面白い部分は、フロントエンド〜バックエンド〜インフラを横断的に触る開発スタイルで開発している点です。 Go のコードを書いたり、Terraform を書いたりしながら開発を進めていることが多いです。
現在は Go や React を中心としたシステムへのリアーキテクチャを検討しています。 バックエンドアーキテクチャの設計やフレームワークの選定、検証とやれることは非常に多いです。
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