こんにちは、DevRelのボブです。この記事では、技術書典15にてGMOインターネットグループ合同での技術同人誌「Good Morning #01」を出した際に、私が編集者として携わった経験を通じたプロセスと、技術書制作の舞台裏について詳しくお伝えします。
技術書典とは
技術書典は、ITや機械工作とその周辺領域について書いた本を対象にした、幅広いジャンルの技術書に触れ合う事ができる同人誌即売会イベントです。サークルとして技術書を執筆して頒布する事はもちろん、一般参加として気になる技術書を購入する事もでき、加えて技術者やクリエイターとの交流も生まれる素敵な場でもあります。また、オフラインとオンラインの両方での開催を実施しており、今回開催された技術書典15は前回に引き続き、池袋・サンシャインシティの展示ホールDでオフライン開催(2023年11月12日)されました。加えて、2023年11月11日から26日までの期間は、オンラインでの展示も開催されており、オンラインマーケットを通じても気軽に参加する事ができます。
技術書典15で実現したかったこと
私は、前回の技術書典14に本を出した経験をベースに、今回の技術書典15にも参加したいと考えていました。 ですので今回は、前回実現できなかった複数人での参加を目指して、以下の構想を練っていました。
- 複数の執筆者を募った合同同人誌を作りたい
- せっかくなら、DevRelとして社内の人を巻き込みたい
- 技術書典参加のノウハウを共有したい
技術書典15に向けての構想を思い巡らせていた時に、GMOグローバルサイン・ホールディングス社でGMOインターネットグループのデベロッパーエキスパートでもあるutautattaroさんから、技術書典へ参加したいというお話を頂き、utautattaroさん主催の元でGMOインターネットグループとしてメンバーを集めて、技術書典15へ参加する流れができました。
希望を叶えるチャンスが来た!と思い、過去の経験を生かし編集者としてメンバーのサポートを担当する事にしました。
技術書典15にGMOインターネットグループエンジニア有志一同として参加
主催と編集者は決まったので執筆者を募りました。結果、GMOインターネットグループ全体から参加の手が挙がり、執筆者を6名集めることができました。合計8名での参加です。GMOペパボからは編集者の私と執筆者3名の合計4名での参加が実現しました。私の具体的な支援内容は、実はあとがきにも書いてますのでぜひお求めくださいといいつつ、編集者としてやってよかったことを3つ紹介します。その前に完成した技術書を紹介します。
Good Morning #01
本の概要をオンライマーケットの情報より以下、引用してお伝えします。
GMOインターネットグループ有志による技術同人誌です!
インターネット業界で日々開発に勤しむエンジニアのあれこれをお届けします!
第1章 Go 言語による自作コマンド作成のすゝめ
第2章 Next.js アプリをTDD の力を借りて開発してみた
第3章 Docker コンテナ引っ越しTips
第4章 A-Frame でつくるVR コンテンツ制作入門
第5章 バッチ実行環境をLambda で作った話(前編)
第6章 Android アプリで見る「あの動き」をSwiftUI で実現してみる試み
初出イベント: 技術書典15
ページ数: 119
Web・モバイルアプリ・インフラに関連するTIPSを沢山詰め込み、結果的には119ページになりましたが、今回はなんと無料で提供する事にしました。オフライン会場では、準備した200冊が終了3時間前の14時には完売する程の反響があり本当に感謝です!
電子書籍版は引き続きこちらのページから、引き続きオンラインでお求め可能ですので、まだの方は是非確認してみて下さい!
ちなみにこちらの写真はオフライン会場のブースの様子です。サークルチケットは最大3枚まで用意できるため、3名の執筆者が自らサークルチケットを持ち、設営に参加しました。私は一般参加者としてお昼に参加しました。他の執筆者も一般参加で早くから参加し、ブースを盛り上げていました。その場で完成した技術書を手渡しする姿を見ることができてうれしかったです。
編集者としてやってよかったこと3選
主催者のutautattaroさんが、コンセプトを決定した上でスケジュールの線を引きました。私はその軸に対し、持っている参加ノウハウを伝授しながらサポートをさせて頂きました。
その際に執筆者を支援しながら原稿を完成させる編集者として「やってよかった事」を3つ紹介します。
執筆の期限をとにかく早めに設定する
過去の参加経験より、書籍の印刷や参加登録の準備などいろいろ作業はあるのですが、一番おさえておきたいことは執筆スケジュールの期限設定です。
11月開催のイベントですが、9月30日を締め切りに設定しました。執筆者が出そろったのは7月初旬なので、3か月もありません。執筆者にとっては期間が短く感じますが、この期限にあわせたボリューム量を把握することが大切です。結果、期限を少し過ぎましたが10月頭にはGitHubを通じた各自の原稿のレビューが済んでいる状態になっていました。このレビューは私も編集者として3人を担当しましたが、複数人の文章をチェックすることも大変でしたのでこの時間をあらかじめ確保できてよかったです。
技術書典に合同同人誌として出すのは初挑戦だったので、「少しでもいいから書いていこう」と決めてスタートしました。目標は一冊の本を印刷してのオフラインイベントの参加です。電子書籍版であれば、PDFに表紙を添えて完成しますが、印刷所に原稿を提出するには、それなりにやることがあります。そのため、このあたりのつまずき想定もスケジュールから逆算して計画を立てました。そして、とにかく手元に原稿があれば心理的に安心します。
それでも、印刷の準備や全体校正を見守る作業は多く、イベント前の原稿完成までの道のりは長かったです。しかし、十分な時間を確保したおかげで、10月末には原稿の調整が終わり、11月頭の開催10日前には脱稿できました。
最初に執筆環境を用意する
次に重要なポイントは執筆環境の準備です。
まずは、Markdown形式での執筆を基本方針として決定しました。これは、Re:VIEWの記法に慣れている執筆者もいる中で、初めて技術書を書く人を考慮した選択です。また、MarkdownからRe:VIEW形式への変換には、pandoc2reviewの使用を提案しました。この方針決定のタイミングで、1人目の執筆者であるharachanが迅速に環境を用意してくれたことが追い風となり、大変助かりました。
このあたりは「やっていき・のっていき」の文化を持つ弊社ならではの動きだと思います。GitHubで共著環境を整える場合は、CIや手元で動く環境を早めに用意し、共通環境で書くことが理想的だと考えています。さらに執筆者の中で、締切を早く持っている方がいらっしゃった経緯もあり、そこに合わせていく形で、他の参加者の締切を決める目安を決定しました。動き出しが早い方がいると環境構築のスピードが早まります。また、編集者として最初の1人目をしっかりサポートすることで、続く執筆者のモチベーションやスピード感に繋がる事も、今回得られた貴重な知見だと思いました。
はじめて書く人はブログを書くことを最初のゴールにする
私は執筆者6人のうち3人をサポートしました。この中で、特に執筆経験がない一人のサポートに重点を置いて取り組みました。この執筆者に対しては「どれだけの量を書けるか?」を把握する必要が重要であると感じました。 (本のページ数を想像するのは技術書の執筆経験があったとしてもなかなか難しいものです…。)
そこで、まずは書きたい内容のプロットを元にブログに書いてもらうように依頼しました。ブログであれば、完成のイメージが湧きやすいです。普段アウトプット活動をしていれば、インターネット上に公開する文書は読者を想定して書くことができます。できれば、この段階で文章の品質を担保するレビューを体験することが理想的です。
記事の公開後は、かかった期間と文字数を計算し、本来の原稿の目標スケジュールとページ数の目安を設定します。次に書きたい量の半分を新たな目標文字数として設定します。これは、思うように執筆が進まない場合を想定し、目標ページ数の最低ラインを確保することでゴールを現実的に近づけるための事前処置です。これにより、小さな目標を達成しながら質を担保して、原稿を完成させるサポートが可能になりました。
以上3つのポイントを紹介しましたが、共通するのはいずれも早めの対応が必要であるということです。このように、複数の執筆者を客観的に見ることができる編集者の役割が非常に重要です。編集者がいることで、スムーズな執筆プロセスを支援し、効率的な進行を促進することが可能になります。
まとめ
技術書典15への参加は、オフラインでのコミュニティ活動とGMOインターネットグループおよびペパボとしての業界への貢献を深める機会となりました。私は編集者として期限のリマインダとレビューを中心にサポートしました。また、「Good Morning #01」にあとがきを寄稿し、この経験からDevRelとしての役割を一層意識するようになりました。そして、#01とあるように次の技術書典16での参加も検討しています。【オープニングセレモニー】技術書典15スペシャルオンラインイベントでも紹介されていますが、#02をもちろん想定しての参加です。今後もDevRelとして継続的に寄与していきたいです。