デザイン リサーチ イベントレポート

開発とリサーチをつなぐ組織体制の実例紹介〜社外雑談会〜

デザイン リサーチ イベントレポート

はじめに

EC事業部シニアデザイナーの小山田 oyamada です。この記事では、株式会社ニューロマジックのリサーチャー&UXデザイナーの皆様と行った、リサーチに関する情報交換会の内容をご紹介します。

概要

株式会社ニューロマジックさんは、「EXPERIENCE AGENCY」をスローガンにサービス、ブランド、コミュニケーションなど幅広いデザイン領域で、デザインコンサルティングと各種クリエイティブを提供されています。お互いに「デザインリサーチを社内に根付かせたい」という気持ちを強く持っており、どのような取り組みでそれを実現しようとしているか共有するための情報交換会が企画されました。

各社の取り組み

雑談会の様子 雑談会の様子。オンラインで実施した。

お話したこと

以下のようなことをお話ししました。

それぞれのデザイン組織、リサーチ体制について

ニューロマジックさん - リサーチ専任のチームが存在

ニューロマジックさんのデザインリサーチ体制

ニューロマジックさんではリサーチ専任のチームがあり、UXデザイナーとリサーチャーが協業し、リサーチの必要な場面で相談を受け、リサーチャーがリサーチを実行しやすい体制を作られているとのことでした。また、各プロジェクトの状況や性格を共有するため、UXチームとリサーチチームの定期的なミーティングが行われているそうです。この体制は、リサーチの有用性を定義し、クライアントの課題と向き合う中で、リサーチの提供価値をコツコツと示してきた結果にあるそうです。

GMOペパボ - 各事業部にリサーチ人材を配置

ペパボのデザインリサーチ体制

いっぽう、ペパボのデザイナーはそれぞれの事業部に配属されていますが、「UIデザイン」「コミュニケーションデザイン」「フロントエンド」「IA」など自身の専門分野を選択します。ここで横軸のつながりがあり、各エキスパートスキルエリア間で知見の共有などしています。(「エキスパートスキルエリア」について詳しくはこちらの記事で紹介しています)。 そこでエキスパートスキルに 「リサーチ」を選択しているデザイナーが数人、デザイナー全体のリサーチ力向上の取り組みをしています。 また、上記の人員が各事業部に配置されており、それぞれの施策でリサーチの必要となった場面で相談を受けるなどし、開発体制にリサーチを入れ込む工夫を行っています。

GMOペパボの体制のメリット・デメリット

双方の体制を比較してみると、GMOペパボのように、事業部にリサーチャー(もしくはそれに準ずるデザイナー)がいる場合は、事業部の動きのアップデートは容易であり、リサーチの入り込むタイミングを把握しやすい、というメリットはあります。しかし、各事業部横断で共通のアセットを作りたい、などの場合、事業部のリサーチ人材同士の意思疎通を的確に測り、車輪の再開発が行われない工夫が必要である、ということをお話ししました。 また、GMOペパボでは、ディレクター陣もNPSアンケートやヒートマップの活用・分析の共有会を別軸で行っており、デザイナーとディレクターが別で動いてしまう事例が多く見られます。ここも改善点であるなという気付きが得られました。

事業部外の人員がユーザーインタビューを行うことについて

上記のリサーチチームの話の流れから、「事業部外の人員がユーザーインタビューを行うことについて」のお話もいたしました。

ペパボでは、事業部内のデザイナーがユーザーインタビューを行うことが多く、例えば、カラーミーショップであれば、EC運営の知識がインタビュー時に役立ちます。もし仮に事業部外のリサーチャーが存在したとして、その事業に関連する知見がない状態でユーザーインタビューを行った場合、発話をうまく深掘りできるか、の疑念がありました。

ニューロマジックさんのユーザーインタビュー体制

その点について、ニューロマジックさんでは、プロジェクトの初期段階で、リサーチャーやUXデザイナーがクライアント企業のステークホルダーへヒアリングをお願いしたり、プロダクトのレビューを行うことで、問題仮説を立て、プロジェクトやリサーチにおけるスコープを設定していく、という工夫をされているとのことでした。

また、より新たな気づきを得たい際には、リサーチャーがプロダクトに関する専門的な知識をあえて頭の片隅に置いた状態で利用者に日頃の使い方を教えていただくことで、先入観を持ちこまずにインタビュー対象者の発話や事象を観察するユーザーテストを提供する場合もあるそうです。 どちらの場合でも、インタビュー時には同席するUXデザイナーが、より専門的な視点で深掘りする質問を行うことがあり、リサーチャーとUXデザイナーがそれぞれの視点から議論を繰り返しユーザーインサイトを探る、というプロセスを提供しているそうです。

まとめ

ペパボではリサーチを社内に根付かせていくにあたり、どのような体制がいいのか模索しておりますが、この情報交換会を通じ、もしリサーチチームが全社に横断的にあった場合の将来像やするべき工夫を見ることができました。株式会社ニューロマジックのリサーチャー&UXデザイナーの皆さま、ありがとうございました。引き続き、われわれは組織として、個人の能力に依存せず、カジュアルにデザインリサーチをできる体制を作り、サービスをより価値のあるものにしていきます!