Slack コミュニケーション

ストレスを生まないSlackのコツ

Slack コミュニケーション

こんにちは、ホスティング事業部の @dojineko です。 今日は2022年02月22日、スーパー猫の日です 🐾

そんな今回は、2022年01月に社内で共有した、Slackを活用した日常のコミュニケーションでストレスを与えやすいパターンの例とその改善手法の提案を、 テックブログの記事として編集したものを共有したいと思います。

今昔ペパボのテキストコミュニケーション

GMO ペパボではコロナ禍以前より、テキストでのコミュニケーションを主体とした業務に取り組んでいます。

普段からほとんどのコミュニケーションはSlackによるテキストチャットで行われ、 それぞれが組織やサービスにある課題やそれらを改善する提案をしたり、業務に関わる内容を文字にしたりしながらコミュニケーションしています。

テキストでのコミュニケーションは、「考えていること」「思っていること」を文字として具体化できることや、 後でログから検索できることなどの、大きなメリットがあります。 一方で、音声でのコミュニケーションにあるような「トーン」で表現される細かな感情表現が難しいという側面を持ち合わせています。

そうした細かな表現が欠落することや、文字にすることが難しいといった部分から、認識のズレがしばしば発生することがあります。

GMO ペパボでの業務中のコミュニケーションにおいても、そういった事例を見かけることはありますが、 必要に応じて別のコミュニケーション手段を併用しながら、うまく業務に取り組めていると考えています。

いろいろなパターン紹介

さて、そんなテキストを主体としたコミュニケーションは、音声によるコミュニケーションとは異なる性質から、 思わぬストレスを受けたり、与えてしまうことがありえます。

日常のやり取りで「うっかりやってしまった!」というシーンは誰しもあるのではないでしょうか。

ついては今回は、いくつかの参考となりそうな例をパターンとして抽象化した上でご紹介し、 それらに対して「どう取り組めばストレスをお互いに発生させずに済むか」という形で考えられる改善案を合わせてご紹介したいと思います。

パターン1:詳細が欠落している

@example エラーについて

😖 パターン1のどこが問題?

この例では漠然と「エラーが起きていること」しかわかりません。 あなたがこのメッセージを受け取った時、どんな気持ちになるでしょうか。

まず、これから話される内容の重要度や緊急度がひと目で判断できない事が挙げられます。 そうするとメンションされた側は何について聞かれるのか漠然とした不安感にさらされることなります。

スレッドに詳細を記載するにしても、スレッドに詳細を記載され終わるまでに、 聞いている側は「なにが来るんだろう」というような不安を抱えながら、書き込みに縛られることになります。

また、スレッドに詳細を畳んで書くことは、見た目上スッキリするものではありますが、 目に触れる機会を減らすことにもなるので、同時に周囲から情報を得る機会を減らすことになります。

加えて、キーワードが少なくなるため、あとで検索するときに検索性が下がってしまうことが考えられます。

✅ パターン1をよりよくするには?

テキストを主体とした会話では「何についての話題なのか」という情報は、次の発言を促すという点において非常に重要な情報源になります。

逆を言うと、それさえあれば聞いている側は「〇〇について話されるんだな」という心構えができます。 それにより事前に関連する事柄に考えを巡らせられるため、結果として聞いている側も情報を引き出しやすくなります。

詳細な内容をスレッドに書くにしても、まず出だしから「何についてを話しているのか」を明確にしてみましょう。

@example
〇〇 の 〇〇 について質問です       <- 必要最低限情報

〇〇 のために 〇〇 をする必要があり <- なぜ必要なのかを添える
〇〇 を行ったところ                 <- 発生条件を添える
〇〇 というエラーが発生しました     <- 起こった事実を添える

調査をお願いできますか              <- 自分が何を求めているかを明確にする

パターン2:メンションだけが来る

@example
----
[スレッド内部で] 〇〇について伺いたいです。

😖 パターン2のどこが問題?

パターン1に近いものですがこの例では、ただメンションが来ている状態となり、受け手としては何も情報がありません。

先ほどの例から比較してより強いストレスを与えやすいパターンと考えられます。

✅ パターン2をよりよくするには?

まず「メンション以外何も書かない状況」を避けると良いでしょう。

簡単にはメモ帳など、テキストエディター上でメッセージを組み立てて、 出来上がったメッセージをコピペするなどの手段が取れます。

もっと手軽な方法として、メッセージを先に書いた後で、関係者にメンションを最後にするという方法もあります。

とはいえ、「間違ってメンションだけ送っちゃった!」という場合もあるかもしれまん。 そういうときは該当書き込みを編集して本文を追記したり、直後の書き込みで素直に謝罪を述べるとよいです。 あるいは、間違った書き込みだったことが分かればいいのでスッと消したりするのも良いかもしれません。

先日の 〇〇 の件について 〇〇 の提出内容と 〇〇 の結果が異なっているようです。
こちらの内容にお間違いないかご確認いただけますか

@example

パターン3:外部URLのみを提示する

@example 〇〇 について書いたので見ておいてください
https://example.test/example/123456789-xxxxx

😖 パターン3のどこが問題?

これは、超大作のまとめ資料を書ききった後で、疲れ切ってしまったときにやりがちなパターンです。

資料を提示している側からすれば、重要な情報はすべて該当URLの内容に記載されている事がほとんどであると考えられます。

一方で資料を提示されている側からすれば、該当URLの資料を開くまで 「何についての内容か」「どこまでの情報が記載されているか」を知りえないので、 これは緊急度や重要度が判断できない状態を生む原因となります。

加えて、組織内で多く会話がこの形で行われるようになると、 テキストメッセージでの双方向性が徐々に失われ、 一方的に告知するだけとなり、組織の心理的安全性の低下に繋がる可能性が考えられます。

また書き込み自体の情報量が少ないので、パターン1と同様検索性を失うことにも繋がります。

✅ パターン3をよりよくするには?

大作の資料ができたらまず、一呼吸おいて休憩しましょう。

おそらく資料を作成した段階で、自分で自覚している以上に疲労が蓄積しているはずです。 そのような状態でコミュニケーションを取ろうとした場合、途中で力尽きて上記の例のようになることが考えられます。 そうなる前に一度休憩を挟んで、スッキリした頭で要件をまとめましょう。

いざ公開をするとなったタイミングで、資料についての簡単なダイジェストを添えるように心がけてみましょう。 こうすることで、資料を読む前に何についての内容が書かれているか大枠で理解できるようになります。 また、資料を読むときにも頭に入ってきやすい状況を事前につくることができます。

@example 〇〇 について 〇〇 をまとめました。    <- 何についての情報なのかを簡潔に示す
〇〇 のようなシーンなどで活用できると思います。 <- 想定している用途を示す

https://example.test/example/123456789-xxxxx

もし質問などありましたら                  <- 一方的なものではないことを示し対話を促す
スレッドでコメントを頂けると嬉しいです。

パターン4:実は大きく工数の必要な作業を軽く要求してしまう

@example XXXX の施策を行いたいため工数の見積もりをお願いします

😖 パターン4のどこが問題?

このパターンは上記の例のような、工数の算出を依頼する場合などで発生します。

この場合、一見「工数がほしいんだな」という要求が示されているので良さそうに見えます。 一方でそれらが必要になるタイミングを判断する重要度や緊急度の判断材料がありません。

いつまでに工数を算出すれば示されていないため、この依頼の仕方をすると、 依頼相手にとって見れば「超緊急で見積もらないといけないのかもしれない」という不安感を与えることになります。

重要な事実として理解しなければならないことは、工数の見積もりそのものにも稼働が必要になるということです。

技術的な分野で言えば依頼内容に関連する実装の現状把握などを行う必要があるかもしれませんし、 それ以外の分野でも個別の契約の状況や管理の現状の把握などを行う必要があるかもしれません。

いずれにせよ、前提として「見積もりはゼロコストで行えるものではない」ということを正しく理解する必要があります。

以上のように、このパターンの問題の根底にあるのは、依頼者と作業者の間にあるコスト感覚のギャップです。 こうしたギャップを認知せずに一方的に迫れば、相手に対して不安や不信感を与えることになるでしょう。

✅ パターン4をよりよくするには?

引き続き、工数見積もりの例をみていきます。

まず、依頼内容について、なぜそれが必要になるのかを端的に説明できるようにしておきましょう。

依頼する内容が誰から見ても、それが重要なことが説明できるよう準備しておくすることは、 業務を遂行するしたり、周囲の理解を得るための行動として、必要な要素です。

その上で、工数見積もりを依頼したい相手に対して一辺倒に「工数を見積もれ」と迫るのではなく、 「いま工数見積もりをお願いすることはできるか」と寄り添う姿勢を示しましょう。

また、工数の見積もりが必要な期日があれば、それも添えておくと良いでしょう。 必要十分な期間があれば、依頼相手が他のタスクをこなしながら、工数見積もりできる算段が立てやすくなります。

なお注意したいのは、このタイミングではあくまで工数見積をお願いしている段階であり、 ご自身が想定しているスケジュールに対して「遅延する」という表現は、非常に攻撃的なものになり得るので避けましょう。

@example (cc @manager)    <- 施策を認知しているマネージャーを明確化すると後で調整しやすい
〇〇 の施策で 〇〇 を行うことを検討しています。
施策のポータルはこちらです https://example.test/example/123456789-xxxxx

該当機能実現のため、エンジニアさんに工数見積もりをお願いしたいです。
2022/xx/xx 15:00 までにあると助かりますがご対応いただくことは可能ですか

このパターンで必要なことは、自身が認識している規模感を明らかにすることと、 相手と対話を通して、コスト感覚のギャップがあるかを確認し、もしギャップがあればそれを早期に認識することです。

パターン5:一方的な期限の設定

@example 2022/xx/xx 16:00 までに XXXX の対応をお願いします

😖 パターン5のどこが問題?

スケジュールを引いてそこから逆算しながら、タスクをこなすときにやりがちなパターンではないでしょうか。 一方的に期限を提示しながら行動することは自分のタスクだけを完遂させることについては一定の効果があるかもしれません。

一方で周囲への配慮にかけている行動である側面を持ち合わせています。 「自分以外は常に手が空いているかというとそういうわけではない」という状況がほとんどなのではないでしょうか?

あまりに事が行き過ぎると、「この人は現場が見えてない」「この人はいつも丸投げしかしてこない」といったような、 無用な対立や不信感を招くことにも繋がりかねないので、あまり連続して発動するのは避けたほうが良いかもしれません。

✅ パターン5をよりよくするには?

必要な施策を遂行するためや、職責上誰かに指示する立場にある場合、スケジュールを作成しながら行動することに迫られる場合もあるでしょう。

では、少し視点を変えて、それ自体を大きく変えるのではなく、 ご自身の気持ちを添えて、相手に寄り添ってみるという方法が効果的な場合があります。

たとえば、調整可能なタスクの場合、対応期限を示すのではなく対応完了希望であることを示すのがよいでしょう。 タスク調整や優先度設定には、円滑に業務をこなすため、依頼する相手と協力する姿勢を示しましょう。

また、調整不可能なタスクの場合は、「対応期限としてはこれであるが、どうしても無理な場合は行ってほしい」というような心を添えましょう。 そして可能な限りそれに応えられるように、自分や周りと協力していきましょう。

さまざまな職種の仲間たちが、各々が誇りを持って仕事をしています。

大きな成功をおさめるには、あなただけの力では難しい事柄がたくさんあるはずです。 お互いに助け、助けられながら、ビジネスを成功に導くために、それらを尊重する気持ちを持ちましょう。

@example 〇〇 の対応をお願いしたいです。                 <- 何をすればいいのかを示す
2022/xx/xx 16:00 までの対応が希望ですが可能でしょうか    <- 完了の希望であることを示す

事業部での優先度は 〇〇 となっており、
他の高優先タスクがありましたら、そちらとの調整を行おうと思います。 <- タスク調整に協力する姿勢を見せる

パターン6:一方的な緊急性の提示

@example おつかれさまです。〇〇 をしてたら 〇〇 が起こりました。
これまで使っていて何も起こっていませんでしたが、突然使えなくなりました。
〇〇 で必要で非常に困っています。今すぐご対応ください。
何度も試していますが動かなくてうんざりしています。

😖 パターン6のどこが問題?

一見して起こった事実を提示する部分を抑えていますが、重要な部分とそうでない部分が混在しています。

また、ご自身を取り巻く状況を一方的に相手に押しつける文体となっていることがわかります。 加えて、緊急性の提示に関して、相手の他の優先度を無視して対応するように迫る形となってしまっています。

とはいえ、ご自身の状況からして、焦りやパニックを感じているので仕方ない部分があるかもしれません。

✅ パターン6をよりよくするには?

まず、お気持ちの表明で攻撃的な文体とならないよう、一呼吸入れましょう。

そのうえで、元の文に含まれていた重要な事実や要素を優先してまとめ、 緊急性や期日については端的に伝えるなど、順番に記載していくのが良いでしょう。

より緊急の場合はその他のスケジュールを握っているキーパーソンにメンションを入れるのがコツです。

@example
〇〇 の処理のため 〇〇 を実行したところエラーが発生しました        <- 発生した事実
エラー画面が表示されたのでスクリーンショットをスレッドに添付します <- 重要な補足情報(1)
先月中頃にも同様の処理を行いましたがその時は問題ありませんでした   <- 重要な補足情報(2)
お手数ですが月末までの処理で必要となりますので                     <- いつまでに
緊急にご対応をお願いしたいのですが可能でしょうか                   <- 優先度はどれくらいか

cc: @manager @director <- スケジューリングを握っている人をメンション先に入れておく

まとめ

コロナ禍やその後の未来ののコミュニケーションにおいて助けになればと思い、 Slackを活用したテキストコミュニケーションのテクニックについて、執筆させていただきました。 一般的なコミュニケーションの話なので、Slackに限らず、メールや他のテキストメッセージでも活用できるかもしれません。

今回いくつかのパターンを架空の書き込みとその改善提案を例として挙げました。 それらで大きく共通するのは、メッセージを投げかける相手を思いやり、自分に何ができるか想像力を働かせるという事だと感じました。

今回お話した中で大切なことは、これまで挙げてきたようなパターンを網羅することではなく、 その根源になっているのは、送ろうとしているテキストメッセージを受け取った相手がどういう気持ちになるか、 想像力を働かせながら、相手を思いやることだと考えています。

もしうまく使えそうなテクニックがあれば、良さそうな部分だけでも参考にしてもらえますと幸いです。

自分でも、うっかりやってしまうようなパターンも含んでおり、実際「失敗しちゃったな〜」と思うことがしばしばあります。 同時に、失敗することをどうするかというよりも、やってしまった失敗を踏まえて、 今後どうすればより良いコミュニケーションをとっていけるのかを、組織にいるそれぞれが考え続けることが大切なのだろうなと感じました。