文化

ひとりのエンジニアから見たペパボの企業理念と行動指針

文化

はじめに

@june29 と申します!技術部という部署の中で、シニアエンジニアリングリードというポジションで働いています。

組織と文化

現在、社内の読書会で『Scaling Teams』という書籍をみんなで読んでいます。その第9章が「文化のスケーリング」という題で、組織と文化についておもしろいことがたくさん書かれていました。勉強になるなあ、と思いながら読みつつ、この章で「こういうことをやるといいよ」と紹介されているプラクティスの大半はペパボで実践できているじゃん、とも思えてうれしくなったのでした。

そこで今回は、ペパボの文化の一端として企業理念と行動指針をあらためて紹介し、あわせて、それらをぼくがどのように解釈して行動につなげているのかを書いてみます。

というのも、組織の文化というのは「それっぽい言葉を額縁に入れて社長室に飾っておけば謎のエネルギーが発生して組織全体がいい感じになる」といった簡単便利なものではなく、組織に関わるひとりひとりの意思決定と行動の積み重ねによってのみ、価値を生んでいくと考えるからです。

企業理念「もっとおもしろくできる」

ペパボの企業理念は「もっとおもしろくできる」です。なので、日常の中の森羅万象あらゆることに対して「これって、もっとおもしろくできるのでは?」と発想して実際に変えてしまえるような人であれば、きっとペパボの一員として過ごす日々は楽しいものになるでしょう。

@june29 はどう解釈しているか?

以下のような素養を持っている人は上手に実践しているな、と思います。

  • 現状を疑う視点を持つこと
  • アンテナをはって世の中を観察し、さまざまな事例と自身が置かれている環境を客観的に比較できること
  • 問題を見つけたときに、ポジティブに変えていくための行動を起こせること

ぼくはソフトウェアエンジニアなので、ソフトウェアのパワーを適切に活用することで「もっとおもしろくできる」の影響範囲を最大化できると考えています。

  • プロダクトを通じて、利用者のみなさんの日々をもっとおもしろくする
  • 社内ツールを開発し人間による作業を省力化・自動化し、社内のひとりひとりがもっとおもしろいことに時間を使えるようにする

新たなおもしろいものを生み出したり、あまりおもしろくない作業があればワークフローを改善したり、ソフトウェアエンジニアが活躍できる領域は大きく広がっています。

行動指針「わたしたちが大切にしている3つのこと」

ペパボの採用サイトにもそれ用のページを用意して解説している通り、以下の3つが行動指針となっています。

  • みんなと仲良くすること
  • ファンを増やすこと
  • アウトプットすること

@june29 はどう解釈しているか?

3つの項目のそれぞれについて解釈を述べていきます。

まず「みんなと仲良くすること」について。

ぼくは決して「飲み会には必ず参加してくれ」といった表層的なお話とは解釈していません。他者との間によい影響を与え合う関係を育て続けること、と捉えています。

ジュニアエンジニアであれば、チーム内のメンバーと認識の齟齬なく意思疎通するところから始まるでしょうか。シニアエンジニアとなれば、職種や所属部署といった境界をこえて影響を与え合うことが期待されます。なにかに取り組むとき、自分ひとりでやるか、チームメンバーとやるか、社内全体に声をかけてみるか、あるいは他社と合同でやるか、さまざまなスコープの選択肢があります。なんでもかんでも最大スコープで臨めばよいというものでもありませんが、適切にスコープを使い分けて「これは部署ごとにやると無駄が多いから、社内のエンジニア全員を対象にしよう!」といった選択を自然にできるとハッピーです。

続いて「ファンを増やすこと」について。

事業部でプロダクト開発に携わっている人であれば、プロダクトの開発や運用を通じて利用者のみなさんによろこんでもらう、というのが最もわかりやすいでしょう。ぼくが所属する技術部やバックオフィスなどの事業部ではない部署では、社内の仲間たちの活動を支援することで間接的に社会に貢献するような動きになりますので、直接的に関わる仲間たちによろこんでもらえるように仕事を進めることになるでしょう。

ジュニアエンジニアであれば「こういう開発をすればよろこばれるはず!」というものを着実にこなして実績を重ねていきましょう。シニアエンジニアとなれば、より広い範囲の人々に届くように、より永く価値を生み出し続けるように、空間と時間の両軸に効く意思決定と活動が期待されます。

最後に「アウトプットすること」について。

アウトプットと聞いて「セルフブランディング」や「自己アピール」のようなニュアンスを想像される人は少なくないと思います。そのような観点で論じられた「アウトプットは重要」という意見をたくさん見かけるからです。ぼく個人は、そういった面に意義があることを認めつつ、それよりも「内省」に重きを置いたアウトプットを大事にしたいと捉えています。

アウトプット。プロダクトをリリースする、ライブラリを公開する、ブログに記事を投稿する、写真や音声や動画でメッセージを発信する。やり方はいろいろとありますので、各位が自分に合ったスタイルを見つけていけるとよいでしょう。どの方法を選ぶにしても「自分はなにを伝えたいのか」を多かれ少なかれ考えることになるはずです。「このプロダクトによって自分が解決したい問題はなんだろう」「この文章によって提起したいことはなんだろう」と考えた時間は、思考の深さを生みます。お仕事を通じて学んだことを社外の人々とも共有しようと思えば、社外の人々にも伝わるように抽象化・一般化・汎用化した上でアウトプットすることになります。この過程が、やはり思考の深さを生みます。

なにを行い、なにを感じ、なにを得たのか。自分自身と向き合うためにアウトプットという手段を活用するのがおすすめです。ジュニアエンジニアは、まずはここから始めてみてください。シニアエンジニアとなれば、受け手の行動を変えるような、影響力を持ったアウトプットが期待されます。

ペパボで活躍しているのはどんなエンジニアか?

ここまでの内容をまとめ、@june29 から見た「ペパボで活躍しているソフトウェアエンジニア像」を描きます。

  • ソフトウェアの特性を理解し、ソフトウェアの力で世界を「もっとおもしろくできる」と信じている人
  • 「みんなと仲良くすること」を高いレベルで実践している人
    • 「みんな」の範囲はより広く、職種も所属も業界もこえて包含していける人
    • 「仲良くする」の質はより高く、単におしゃべりするだけでなく切磋琢磨する関係を構築できる人
  • 「ファンを増やすこと」を高いレベルで実践している人
    • 社内外を問わず、関わる人々にポジティブな影響を与え、頼られる人
    • より多くの人により長い期間に渡って魅力が伝わるような成果を出せる人
  • 「アウトプットすること」を高いレベルで実践している人
    • なにより自分自身と向き合い、自分の思考に自覚的である人
    • 結果として、自身の発信によって周囲を動かしている人

こうして書き出してみると、実際のペパボのCTOやVPoEや上位等級のエンジニアたちは例外なくこの像にあてはまっていることが確認できて便利でした。

まとめ

ペパボの企業理念と行動指針を @june29 がどのように解釈しているかを述べ、どのような実践がありうるかについて書きました。これは2020年10月時点での @june29 個人の考えです。これを読んだペパボの中の人は、ぜひ「自分はどう捉えているか」を言葉にしてみてほしいです。多様な解釈を交換し合い、実践を通じて影響し合うことで、ペパボの文化をより魅力的で心強いものにしていけるでしょう。

最後に。メタな話ですが、こうしてこの文章を書いて公開することもペパボの文化の体現であると考えています。ぼくが考えていることを言葉にして誰でも読める場所に置くことで、みんなと仲良く議論するための種としました。これを読んだ誰かひとりでもペパボに興味を持ってくれたなら、ファンを増やすことにつながるかもしれません。自分の頭の中に潜って言葉を引っ張り出してきたからこそ、こうしてアウトプットできたのです。

ペパボでは、ペパボの文化に共感して活躍してくれる仲間を募集しています!

それと、各社のエンジニアリングマネージャによる同様の記事も読みたいので、みなさんもぜひ書いてください。仲良くしましょう。

参考文献