ペパボのシニアデザイナーをしている咲 @satosio です。
2011年に入社してから、heteml→PEPABO WiMAX→Goopeと異動をかさね、
2017年7月1日から技術部デザイン戦略チームに配属となりました。
Goopeのまえはロリポップ!でリブランディングに参加していたので、多くのサービスを渡り歩いてきた感じがしますが、ついにサービスを持たない部署に入ることになりました。
この記事に書いていること
デザイン戦略チームを『新設した経緯』と『いまとこれから』を紹介していこうと思います。
まず、ペパボのデザイナーは各サービスに所属している、いわゆる縦割りの組織です。一方で、インフラエンジニアやカスタマーサービスは、サービスをまたぐ横割りの組織となっています。
そして今回、新しくつくったデザイン戦略チームは、デザイナーの横割り組織になります。メンバーは、シニアデザイナーの @sizucca と私のスモールチームです。
デザイン戦略チームとは、ざっくりいうとペパボのデザインを最高にしていくために、パートナー(社員)・部門・全社を対象に支援していく組織になります。
このチームを軸に、たのしく働ける環境をつくっていきたいな、というのが個人的な想いとしてもあります。すでにデザイナーの横割り組織がある会社や、自分たちもつくろうかと思っているデザイナーの方々に反応をいただけると、とてもうれしいです。
デザイン戦略チームとは?
まずは、このチームにはミッションがあります。
『デザイン思考』とはユーザーの視点から問題の本質を見ぬき、解決へ導く能力と定義しています。
- 個人
- サービス・部門
- 会社
デザイン戦略チームは、この3つの対象がかかえる課題を解決します。3つの対象を成長へとつなげる目的のもと、ペパボにおけるデザイン思考とはなにかを定義し、その向上のために必要な仕組みをかんがえて実施するチームになります。
デザイン戦略チームが必要とされた背景
どうしてデザイン戦略チームが必要になったのかというと、 前述した3つの対象がかかえている課題の解決を急ぐためです。
個人(デザイナー職)の課題
- 社内外への積極的なアウトプットが不足している
- 評価制度などの業務にシニアデザイナーの時間がさかれ、サービスと自分自身の成長になかなかコミットできない
サービス・部門の課題
- 横のつながりが弱く、共有が十分にされていないため効率的でない
- サービスでの施策のスピードが遅い
会社の課題
- 全社課題にとりくめる時間がない
- 部門外からの相談窓口・フローが定まっておらず、シニアデザイナーにタスクが集中する
シニアデザイナーは、この課題をはやく解決するために、サービスと個人の成長に注力するデザイナーとサービスをもたずに横断的な施策を実施するデザイナーにわかれるという手段をとりました。
他社のデザイナーさんにうかがってみると、アートディレクターやチーフがいて、さらに上に室長や部長がいる組織が一般的なようです。またUXチームのような組織が存在している場合が多くあります。
そのため、ペパボの背景とは合致しないかもしれませんが、デザイナーの横割り組織が必要とされている状況は共通しています。この記事が、デザイナー組織はなにを目的として行動していくかの一例になればいいなと思います。
ペパボのデザイン力を向上させるために必要な5つのこと
まず、デザイン戦略チームが生みだそうとしていることは、大きく5つあります。
この5つのうち実行に移せる順番が決まっているものもありますが、我々のような新設のチームではインパクトが大きく(=関わる人数が多い)効果が高いもの から行っていくことが重要になります。
進め方
まず、デザイン戦略チームはミッションを分解して、この3段階で進めていくことにしました。
- デザイン思考の確立
- マインドセットとしての定着
- 日々の仕事での実践
1.デザイン思考の確立
まずは、ペパボのデザイン思考を確立するというのが第1段階です。
この目的としては、問題を解決する際の考え方や行動を、再利用可能な形にし、資産として増やしていくことにあります。
デザイナーが仕事をする際には、分析をし、プロトタイプをつくり、それをテストし、さらにアップデートをくり返して検証していく、そのようなフローが存在しています。
いいデザインをつくりだすフローや技術、知識を見える形としてつくり、それをだれでも扱うことができれば、サービスを良くしていけるのではないかとデザイン戦略チームでは考えました。
また、ペパボのデザイン思考を確立する際に重要な点は、“ペパボの” がつくことにあります。
ペパボは、一般的に良いではなく、ペパボとして良いと思えるほうを模索していかなくてはなりません。もちろん非常識であってはいけませんが、ペパボのミッションは『もっとおもしろくできる』なので、デザイン戦略チームでは、よりわくわくできるほうに舵を切っていきたいと考えています。
デザイン戦略チームはデザイン思考の確立において、具体的な内容の一部として、以下のことを行っています。
- デザインスプリントの導入
- ナレッジのアセット化
- サービスの数値の可視化
- サービスのUXレベル可視化
2.マインドセットとしての定着
次に、1で確立したデザイン思考をパートナーのマインドセットのひとつとして定着させる段階があります。
これは、ただ存在しているだけの便利なものを “使われるもの” に昇華させることが目的です。
問題を解決する手段は、デザイン思考が絶対なのではありません。例えば、技術者や法務、経営者としての考え方など、専門的な知識やスキルから発生した考え方が存在しています。
「こういう考え方もできそうだ」というように、パートナー全員が、デザイン思考という考え方を自分のマインドセットのひとつとして扱えるようになれば、新しい発想や、最適解へ最短でたどりつくことができるのではないかと考えています。
1において、デザイナーはデザイン思考について知っているだけだったり、アセットもつくろうと思えばつくれる状態です。 デザイン思考を定着(=習慣)とするためには、使いやすさを極めることにくわえて、仕組みや行動のフローに組みこむということが必要になります。
3.日々の仕事での実践
次にデザイン戦略チームは、2で身につけたデザイン思考をパートナーが日々の仕事で実践できるようにする状態を目指します。
この目的は、デザイン思考を継続的に実践することで、パートナーが価値を得られ、楽しさや意義を感じられる状態をつくるということにあります。
デザイナーを含め全パートナーが、デザイン思考に則ってつくった結果、サービスに価値を与えることができたり、自分のつくったものが価値のあるものとして使われたとき、楽しさと意義を感じられるのではないでしょうか。
パートナーが人から強要されずに自分の意志で行動できる、自分にとってのプラスとサービスにとってのプラスを両方実現できれば、実践される状態をつくったといえるのだと思います。
デザイン戦略チームの未来
1,2,3のステップは、デザイン戦略チームが生みだそうとしている大きな5つのことのうち、1.人材教育
と2. 横断化
に関係することでした。つまり、まだ5つのうち3つに関しては、詳細なタスクに落としこめていない状態です。
これに関して、デザイン戦略チームは1,2年後に実現できるようにロードマップをひきました。 デザイン戦略チームが機能する状態から、ペパボにとってなくてはならない存在になるというのが長期的な目標としてあります。
まとめ
デザイン戦略チームの『いまとこれから』について、新設の経緯と目的をもとにご紹介しました。
ペパボのデザインを最高にするために、パートナー・部門・全社を対象に支援していくのがデザイン戦略チームの役割です。
成果をバーン!と出してから宣伝したいところではありますが、先にこんな大きなやっていきを宣言することで、がんばらねば…という気持ちを高めています。デザイン戦略チームの詳細な活動内容と結果につきましては、続報をお待ちください。
デザイン戦略チームのミッション
ペパボのデザイン思考を確立し、
パートナーのマインドセットのひとつとして定着させ、
日々の仕事で実践できるようにする。
個人的な感想
異動前は、サービスから離れると自分では手を動かさなくなってしまうのかな?デザイナーとしてそれはどうなのかな?と思っていたんですが、そんなことを思うひまなく毎日手を動かす日々です。手どころか口も足も動いていて、いままでとは違うスキルが必要になってきました。
業務でPhotoshopやIllustratorを立ちあげる機会が減った反動で、重い腰があがらなかったポートフォリオサイトをつくりはじめたり、イラストを描いたり、作字をしたりしています。制限されればされるほど意欲的にやるのかもしれません。
仕事も趣味もいい塩梅でやっていけそうです。